仕事柄、結構多くの事業計画書を読む。
その中で良くあるのが、「プラットフォームビジネス」を展開し、顧客を「囲い込む」的な表現である。
そういったことができれば素晴らしいし、そういう表現を記載したほうが「通る」んだろうけれど、小生としてはそういう表現を目にした瞬間に、警戒レベルを上げる。
ほんとにこんな事業、成り立つのかなぁ、と。
というのは、まずもって「プラットフォーム」を使いたい顧客も、「囲い込まれたい」顧客も、存在しないと思っているからである。
プラットフォームを展開して顧客を囲い込もうとする事業計画書に、顧客視点が存在しているのか、強く疑問に感じるし、顧客視点が存在しない事業計画は絶対に成立しない。
「プラットフォームビジネス」といえば、例えばAmazonがそうかもしれないが、別にAmazonを使いたいという顧客ニーズは存在しなくて、欲しいものを安く早く便利に買いたいというニーズが存在するだけで、それが満たせるのならば別にAmazonでなくても良い。
実際Amazonしか使わない人間は存在しないだろう。
そういう意味では、Amazonに囲い込まれたい人も居ないわけで、結果的にAmazonはプラットフォームになったけれど、一つ一つの顧客ニーズに徹底的に向き合ってきたから、かろうじてプラットフォーム的に顧客をつなぎとめられているだけに過ぎないと思う。
言い方を変えれば、顧客は便利だからそのプラットフォームを利用しているだけで、もっと便利なものが出れば簡単に乗り換えてしまい、「囲い込まれている」わけではないということだ。
また、強固なプラットフォームといえば、リクナビを筆頭に、リクルートグループが得意とするマッチングモデルと言われるプラットフォームもある。
これは海外では”Two Side Platform”と呼ぶらしい(uberもAirbnbもそうだ)。
”Two Side Platform”はとても素晴らしいビジネスなのだが、難点が一つある。
それは、立ち上げのパワーが物凄くかかることだ。
売り手と買い手を同時に掻き集めなければマッチングは成立しないし、成約率も実はビックリするほど低いことが多いので、膨大な「積み上げ」が必要になる。
そうなると、先行投資の営業コストが巨額になりやすく、失礼な言い方だが常識的な判断では実行出来ない(得意としたリクルートですら、上場会社となった今では難しいのではないか)。
そんな難易度を織り込んだ事業計画が、会社の決裁を得られるとも思えないので、やっぱり警戒レベルは上がってしまう。
なので、企画側として望むのは理解できるのだが、「プラットフォームビジネス」は危険なのである。
まぁ、ご参考ということで。