人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

組織のビジョンと新規事業

新規事業は、所属する組織の描くビジョンの延長線上で考えるべきか、ビジョンを取っ払ってゼロベースで考えるべきか、という質問を最近よくいただくので、自分なりの見解を示しておきたい。

ビジョンに従うべきという考えの論拠は、飛び地の事業リスクを避けることだったり、既存事業の延長線上の方が経営資源を活かせる、といったものがある。

 

ゼロベースで考えるべきという考えの論拠は、ビジョンの拠り所自体が崩れかねない昨今の状況で、その延長線上で考える方がむしろリスクが高い、というあたりが主だ。

小生の考えは、どちらが正しいかではなく、どちらが組織を動かせるか、という観点で判断すべきだと思う。

 

延長線上とゼロベースのどちらが正しいかでいうと、どちらも組織の未来予測における仮説でしかなく、いずれも正しい場合もあれば、間違っている場合もある。

事業や組織や業界や時代、といった変数が多い予測において、一つの考え方が常に正しいということはありえないし、何十年か先に振り返って検証することは出来たとしても、今まさに問題に直面する当事者には何の役にも立たない。

 

簡単に言えば、正解がないのである。

しかし、だからといってどちらも何もしなければ衰退するだけなので、なんらかのアクションをとらなければならない。

 

そうなった時に、延長線上とゼロベースの、一体どちらが組織を動かせるのか、ということが問われるのだと思う。

どんなに高邁な理想を語ったところで、実行が伴わなければ意味がない。

 

例えば、延長線上で考えても誰もピンとこないので、ゼロベースで有志で動き出したとする。

当然失敗することもある。

 

しかし、だからといって延長線上であるべきだったのかというと、それで成功したかどうかは誰にもわからないし、そもそも実行に移せたかもわからない。

なので、たとえ失敗しても、「やっただけマシ」なのだ。

 

失敗を通じてちゃんと得るものがあれば、それで良い。

財務的には痛むかもしれないが、次に取り返せば良い。

 

問題が顕在しつつあるのに、逡巡して何もしない組織は、優秀な人材から辞めていく。

そうなるといよいよ取り返しがつかなくなり、その方がよっぽどリスクだし、損失である。

 

新規事業に携わる人には、常に「何が正しいのか」と同時に「どんなアイデアが人を動かすのか」ということも、併せて考えることが大事だと思うのだ。

まぁ、ご参考ということで。