人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「完全残業ゼロのIT企業になったら何が起きたか」 読了

まずはリンク。

完全残業ゼロのIT企業になったら何が起きたか

完全残業ゼロのIT企業になったら何が起きたか

 

 

フォローしているブロガーのご推奨ということで、買って読んでみた次第。

自らブラック企業で育ち、ブラックを地でいく会社を経営してしまっていた社長が、思い切って残業ゼロを徹底したらどうなったか、という話である。

 

残業ゼロに振り切ったきっかけは、その会社で唯一のスキルを持った社員の退職申し出。

その事件のあとの徹底ぶりは、ブラック企業出身っぽいガチンコ感満載で(笑)進んで行く。

 

社員の仕事の見える化は、もともとツール類を使っていたのだが、残業ゼロにすると振り切ってはじめて活用されるようになった、というエピソードは興味深い。

目的とコミットメントなく、道具だけ提供しても誰も使わない、ということでもあろう。

 

その他にも、全員で対応するために、顧客向けには個人のメールアドレスを提示せず、共通のアドレスを使うとか、業務日報も18時になると「残念でした」の表記とともに強制的に止まるとか、「なるほど」というところから、ちょっと笑える話まで、いくつか綴られて行く。

考えさせられるのは、所定の業務量を(しかも業績は伸びて行っているそうである)残業ゼロで達成していくためには、それなりにストイックに働かなければならないようで、のんびりマイペースで仕事したいという社員は辞めていったようだし、タバコ休憩も勿体無いので卒煙者が増えたというような記述もあり、社員に大きな変化をもたらす打ち手だったということだ(もちろん殆どの社員がポジティブな変化と捉えているようだ)。

 

時間で管理されているようで、実は曖昧な環境で働き続けている(それは社員の責任ではないところと、社員の責任のところとそれぞれあるだろうが)日本の(ホワイトカラーの)会社員にとって、バチっと終業時間を決められるというのは、存外厳しい変化なのではないだろうか。

筆者の会社は「ホワイト企業」として表彰されているとのことだが、「ホワイトな職場環境ってなんだろうね?」という疑問も、ふと頭をよぎるのである(一応述べておくと、残業ゼロにした筆者の打ち手は、小生個人としては大賛成)。

 

例え話だが、これまでの日本企業は、ホワイトカラーの社員に10キロ走るノルマを課していて、標準タイムは1時間だけれど、厳密には管理せず、2時間でダラダラ走ったり、本当は早く走れる人も遅い人に合わせていたような状態。

そこを、厳密に1時間で達成せよとなったときに、2時間かけていた人は、キツくて仕方ないに違いない。

 

長年の習慣から、本当に達成がきない人もいるかもしれないし、達成できるフィジカルを持っていても、倍のペースで走るのは3〜4倍キツい体感値だろうから、「やりたくない」という人も出るんだろうなと。

働き方改革」というのは、10キロ1時間を厳守させることなのか、「それはやりたくない」という人に別の働き方を用意してあげることまで含むのか、なんとも結論の出ない考えを思い起こされる本なのであった。

 

まぁ、ご参考ということで。