小生が銀行員になりたての頃、研修プログラムの一環で、社内の偉い人の講話を聞く、というのがあった。
その中の一つに、為替のトレーディングの偉い人(ディーリングだったかもしれない)のお話を聞く機会があった。
とっても淡々として、偉ぶったところもなく、「いかにもその世界でずっと喰ってきました」という感じで個人的には好感を持ったのだが、講話の内容は、ドル円相場の推移を、アメリカ大統領戦と絡めてレクチャーいただく、というものだった。
どちらが円安で円高だったか、というのも、もはや記憶が定かでないのだが、アメリカ大統領というのは、就任後すぐは、政治の安定を求め、対外債務の縮小・財政健全化に走るものだと。
そして、二年経過辺りから、二期目を目指して人気取りを始めるので、どちらかと言うと財政出動・バラマキに振れ、無事二期目当選となれば、一期目のスタートと同じことを繰り返す。
アメリカ大統領の場合、三期目はないので、二期目の後半は完全に人気取り(レガシーというやつ)に入っていく、と。
内容が正しいかどうかというのは、あまり意味がないと思っていて、大事なことは、実際にそのような「見立て」があり、一定の信用度で流通しているということ。
そして、その信用度が得られるほどに、やっぱり確からしい、ということだ。
その講話を聞いたのは、もうかれこれ18年前なわけだが、小生に鮮烈な印象を残している。
日々新聞やテレビで目にする数字の動きが、そのような遠い国の、「奥の院」の人事や心理に影響されるというのは、とても興味深いものであったからだ。
そんな身近な数字といえども、そこには経済の動きがあり、経済には国際政治が絡み、更にその裏には、泥臭い人間の心理があるのだ。
些細なことにも、考えていけば、大きな流れ、大きなつながりが存在しているのだが、人間はどうしても目の前の小さなことで考えを支配されてしまいやすい。
今起きている小さなテーマが、歴史、空間、人間の心の有り様など、どんな大きなテーマとつながっているのか、その講話以来、常に考え続けるようにしている。
極めてドメスティックな仕事を続ける毎日であるが、小生が国際政治のWatchを欠かさないのは、そのためである。
まぁ、ご参考ということで。