人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「なぜ崎陽軒のシウマイは冷たいのに売れるのか?」 読了 〜Think different の難しさ〜

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これもKindle日替りセールだったろうか。

マーケティング系の本はやはり手にとってしまう。

 

ちなみに小生、崎陽軒シウマイ弁当は一度くらいは食べたような気はするが、ひょっとしたらどうだろう、というレベル。

それはともかく。

 

マーケターの著者による、事例集とでもいうべき本。

他社とはちょっと違った、Appleの昔のCMでいうところの「Think different 」なやり方で独自のポジションを作ったエピソードが多数掲載されている(特に著者が関わったもの、ということでもないらしい)。

 

崎陽軒の他にも、獺祭の旭酒造とか、ペヤングとか有名無名数多く、ビジネス豆知識として「へー」というネタが多くて興味深い。

本書では「だから皆さん頑張りましょう!」で止まっていて、具体的な方法論までの言及はなく、そういう位置付けの本である。

 

しかしねぇ、「逆張り」とか業界の非常識とか他の業界を真似るとか、考えるまではできるのである。

問題はそれをどうやって実行するかなんだよねぇ。

 

そこはもう、「発想法」をコネ繰り返してマーケティング用語をちりばめた企画書では通らなくて、逆張りの世界を実現することの正義・大義・信念みたいなものがないと、乗り越えられないと思うのだ。

本書では出てこないのだが、例えばスシローの理念はこうだ。

 

「うまいすしを、ひとりでも多くの人に腹一杯食べてもらいたい。 『この価格で、こんなにうまいのか!』とお客様を驚かせたい。」

https://www.akindo-sushiro.co.jp/company/philosophy.html

 

「安くてうまいすし」なんて、経営的には矛盾しているんです。

多くの寿司屋にとっては逆張りの戦略。

 

でもこのメッセージには「それでもやるんだ、そのために起業したんだ」みたいなものが伝わってこないだろうか?

特に「腹一杯」というあたりに、似たような理念を掲げる他社とは違う執念を感じないだろうか?

 

「Think different 」の本質は、そこにあると思うんだよなぁ。

まぁ、ご参考ということで。

 

 

「おひとりさま自衛隊」 読了 〜思わず身が引き締まる〜

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いざ志願! おひとりさま自衛隊

いざ志願! おひとりさま自衛隊

 

 

 

こちらもKindle日替りセールでポチった一冊。

もはや知っているようで知らない分野は片端から手を出すというスタンスに近いのだが。

 

当時27歳のライターであった女性が、友人との酒席の勢いで予備自衛官に応募し訓練を受けた体験記。

予備自衛官の制度とはどんなものか、実際どんな訓練をするのか、知られざる内情とは、などなどを面白おかしく、人によって好みが分かれるほど軽いノリで(小生はギリギリ許容範囲)綴られていく。

 

「面白おかしく」の面白さもあるし、普段触れることがない情報を得る興味深さもあるのだが、訓練を通じて著者自身が予備自衛官としての使命を得て、成長していく心の移ろいが、成長物語として読ませる。

多分著者も無意識なのだと思うし、だからこそ心に届くところがある一冊だと思う。

 

それにしても、日本の自衛隊というのは、きっと練度は世界的にみても相当高いのだろうなぁと本書を読んで感じさせられる。

他国のように食うために仕方なくという人の割合は少ないだろうし、義務で任官しているわけでもないし、そういう意味では志が違うんじゃないか。

 

そういう人たちに、ギリギリの装備で頑張ってもらっているというのはちょっと申し訳ない気がする。

ちょっと長いのだが、いろいろな人に読んでもらいたい。

 

きっといろいろ思うところがある本なのではないか。

まぁ、ご参考ということで。

「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」 読了 〜失敗は伏線〜

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これもKindle日替りセールでポチった一冊。

著名人の若き日のエピソードというだけでそれなりに面白そうだし、キャリア論的な学びがあるかな、という程度の理由で購入。

 

積読消化で引っ張り出したのだが、結論から言えば非常に面白かった。

山中伸弥羽生善治是枝裕和、山極壽一の話が面白くないわけがないのだが。

 

大学で行われたそれぞれの講演録と著者との対談という構成になっていて、いずれも興味深い。

最近の若者は著名人と距離を置いてしまって憧れるということが少ないのでは、であれば率直に失敗談も含めた若き日を語ってもらおうではないか、という趣旨なのである。

 

それにしても、人生における失敗というのは、物語の伏線みたいなものかもしれないな、と思う。

その瞬間はその失敗か全てを支配しているかもしれないが、後になって「そうきたか!」という展開に持っていくことは可能なのである。

 

いや、そう持っていく主体的な営みこそが腕の見せ所だし、伏線は回収しなければ伏線のままで、本当に勿体ないだけ。

もちろん、回収しきれない伏線だってあるだろうから、「若いうちはとにかく失敗しろ」と無責任に言うことは出来ないけれど、伏線のない物語が面白い筈もない。

 

回収しきれないほど伏線を張っても仕方ないけれど、そこそこインパクトのある伏線でなければ、物語は面白くならない。

失敗との向き合い方というのは、そういうものなんじゃないか。

 

まぁ、ご参考ということで。

「18歳の著作権入門」 読了 〜線引きは大事〜

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18歳の著作権入門 (ちくまプリマー新書)

18歳の著作権入門 (ちくまプリマー新書)

 

 

 

本書もKindle日替りセールでポチった一冊。

先日も著作権関係の本は読んだが、固め打ちというところ。

 

とはいえ、2015年の本なので最新の法改正には準拠していないが、そこは大きな問題ではないはず。

元々はウェブメディアの連載を一冊にまとめたもので、「18歳の」と謳ってはいるけれど、二次創作やSNSでの投稿、youtubeでの視聴やアップロード(「歌ってみた」「踊ってみた」含む)にあたって、どこまでOKでどこからがNGかの線引きを示そうという趣旨。

 

そういう意味では非常に実用的で、わかっているようでわかっていなかったところもスラスラ解説してくれる。

連載記事らしい、切れ目の良い編集も頭に入りやすく、裁判事例研究などなかなか興味深い。

 

著者も法律の専門というだけでなく、コンテンツも相当お好きようで、ノリも軽くて読みやすい。

正直、どこまで線引きが頭に入ったかは微妙なのだが、それはまた本書を読めば良いとして、読み物として充分面白いので、創作を趣味とする(趣味にしようかと考えている)人には、一読を勧めたい。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

「100分de名著 マキャベリ 君主論」 読了 〜職業人の人間臭いノウハウ集〜

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購入のきっかけはKindle日替りセールだったと思う。

歴史関連の一般教養として、またリーダーシップやマネジメントに関わる興味としてポチる。

 

確か岩波文庫の「君主論」は昔読んだことがあったと思うのだが、その時は「ふーん」で終わっていたような気がする。

本書はイタリア語学者による解説書。

 

内容の概略や読みどころもさることながら、マキャベリの人物像や君主論を書いた背景、その後などについて説明されている。

テレビ番組と連動した本なので、番組で行われた元外交官から見た君主論についての対談も収録されており、興味深い。

 

有名な話かもしれないが、君主論は浪人時代のマキャベリが、官僚としての有能さを自らアピールするために書いた本。

現場で苦労したリアリズム、外交官として海外を見聞した知識が反映されており、マキャベリのその他の書簡と合わせて紐解くと、職業人としての真摯な姿勢が垣間見られ、個人的にはマキャベリの人物像を見直す機会となった。

 

しかしね、今時に転職活動で本まで書く人、居る?(小生はパワポで提案書を作ったことはあるけど)

それだけの情熱があるんだから、雇えばよかったのになぁ、なんて。

 

まぁ、ご参考ということで。

「渋沢家三代」 読了 〜時代の産んだ傑物〜

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渋沢家三代 (文春新書)

渋沢家三代 (文春新書)

  • 作者:佐野 眞一
  • 発売日: 1998/11/20
  • メディア: 新書
 

 

 

ビジネスに関わる人間として、それも新規事業に関わる人間として、渋沢栄一を素通りするわけにはいかない。

日本の近代主要産業の立ち上げに関わった人物であり、今度一万円札の肖像になる人である。

 

その程度の認識しかなかったので、せっかくだからということで本書を手にしたのだが、本書はタイトル通り、渋沢栄一とその子、孫についての評伝である。

三代分なので若干長いのだが、スルスルと読める。

 

渋沢栄一については、もう歴史上の人物扱いとして敬称を省いてしまうけれども、どちらかというと英雄視する見方が多いと思う。

時流があったとはいえ、偉業を成し遂げたのは確かなのだが、本書を読むと家庭をあまり顧みることなく、やりたいことをやりたい放題やった面も浮かび上がる。

 

日本近代産業勃興と教育事業に生命を燃やした偉人ではないか、と言われればそうなのだが、その割には妾も婚外子もあちこちに居てとなると、小生としての人物評価は霞む。

その結果複雑な縁戚関係があり、それが後の代に不遇の芽を残したのだとすれば尚更。

 

こういう振る舞いって、現代のグローバル社会ではかなりネガティブなんじゃないかと思うのだが、それをこのタイミングで紙幣に掲げちゃうというのは何か横槍が入ってしまわないかと余計な心配もしてしまう。

それはともかく。

 

二代目は偉大な父親のプレッシャーからか、放蕩の限りを尽くして廃嫡となる。

若くして当主となった三代目は、当主の役割をこなしながらも本来の自分の夢を捨てずに私財を投げ打ち、結局戦後の財閥解体のタイミングで自ら渋沢家三代の家を畳んでしまう。

 

そういう意味では、三代続けて「やりたいことをやりたい放題やった」といえなくもない。

著者はそこに、日本人が失ったメンタリティを見るのだが、なんとも複雑な読後感を持った。

 

渋沢栄一と孫の残したものは偉大である。

しかしその家族たちは果たして幸せだったのかと思うと、偉業についてまわる犠牲者のように思えなくもないのだ。

 

なんとも、なんとも、である。

まぁ、ご参考ということで。

 

雑談をする仕事

元々リモートワークは行なってきたわけだが、この数ヶ月本格化している中で、改めて職場での雑談も仕事のうちだなと実感している。

もちろん作業中心の職務なのか、管理側の仕事なのかで雑談を仕事とする割合は違うと思うが。

 

雑談のメリット①

お互いのことを良く知ることができる。

お互いのことをよく知っていれば、信頼関係が醸成され、連携のスピードも質も上がるし、多少の融通も効くようになる。

相手のことをよく知っていると、通常業務から少し離れたテーマを扱うときでも、「そういえば以前あの人がこの件について語っていた」みたいな形で繋がりやすい。

 

雑談のメリット②

まとまってなくても話題にできる。

テキストでのコミュニケーションは、話がまとまっていなければ成り立たない。

まとまっていない状態でスタートするコミュニケーションは、相手に負荷をかけることだから、仕事ではあまり許されない。

が、雑談なのでそこはある程度許容されて欲しいし、話すことでまとまっていくこともあるのだから、これは雑談のメリットと言って良いのではないか。

 

雑談のメリット③

その場を離れれば消えていく。

記録に残すのは仕事の基本だが、雑談はその場限り。

忘れ去ることで重荷にならないし、本当に意味がある会話がなされた時は、きっと忘れないし、なんだったらそう感じた人間が記録しておけば良いだけ。

イデア発想の方法論でも、インプットを一旦忘れる、というテクニックは王道である。

 

リモートワークは続けるけれども、せっかく会社に来た時は、通りすがりの雑談をたくさんした方が良いと思う。

まだランチ会なんていうのは出来ないけれど、どうにかして制度化したいくらいだ。

 

まぁ、ご参考ということで。