以前から存在は知っていて、気になっていたのだが、復刊していたものをたまたま目にして購入。
曰く、企業の競争戦略は「バカな」と「なるほど」で構成されていると。
同業他社も思わず「バカな」と言ってしまうような打ち手に、「なるほど」と唸らせる論理性や仕掛けがあったときに成功する。
「バカな」と言わないような、ある意味当たり前の打ち手ではみんな真似をするか、すでに先行されてしまうもの。
そして当たり前だが「なるほど」と唸らせる論理性や仕掛けがなければ、ただ気を衒っただけになって成功しない。
そのセットで構成されていることが大事なのだが、よく考えたら「兵は詭道なり」そのものかもしれないんだけど。
古い事例となってしまったが、金沢のホテル百万石の話。
何十年も前、田舎の田んぼだらけの土地に、馬鹿でかい鉄筋コンクリートの温泉旅館を建てた時、同業他社は「バカな」と当然思ったわけだ。
しかし当時の社長は、温泉地は山間から平野へと栄える場所が移っていくという超長期の読みと、ラスベガスで始まったコンベンションホール普及の流れが、東京・大阪に広がってきたことから、広いスペースで宴会をしたいという需要が来るのではと睨んだ。
個人的に「ほー」と思ったのは、600畳の大宴会場が年に五、六回埋まれば良いと見込んでいたら、月に五、六回埋まったというくだり。
需要の変化だけでなく、事業採算も年五、六回でペイするように、かなり低く設定したということだと思うので、その辺もひっくるめて「なるほど」なのだ。
本書は古いので、取り上げられている企業群も、その後の社会変化を受けてダメになってしまったところが多いのだが、それはまた別の課題なのであって、本書が示すコンセプトがパワフルであることに変わりはない。
「ウチの会社が取りうる『バカな』と『なるほど』ってなんだろう?」、そう思わずにはいられない。
まぁ、ご参考ということで。