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以前、「ハイパーメリトクラシー」などという単語を聞き及んだことがあり、組織と人材に関わる身としては一度読んでおこうと思い、Kindleのセールの時に購入。
少し前に人材育成と成長に関わる本を読んだこともあり、併せて積読を消化する。
「能力主義」というのはわかるようでいて、誰もが納まりの悪さを感じる概念ではなかろうか。
大きくは、人間の能力は本当に評価できるのか、その能力と仕事の成果は本当にリンクしているのか、能力があれば職場の仲間としての人間性は問わないのか、あたりだろう。
ハイパーメリトクラシーというのは、学歴のようななんらかの形で一応「見える」能力だけではなく、コミュニケーション能力などの非認知能力が重視される社会傾向をいう。
本書ではその辺りを踏まえた上で、後期近代社会である現在においては、学歴以外の非認知能力での能力評価がある種の必然であり、そしてそれはひたすら強化される一方、その能力を正確に測定することはできないと述べている。
それを非常にロジカルに章立てて論証しており、残念ながらこれが人材育成観点ではなかなか消化しにくい。
学歴だけではダメだという話は日本においても100年以上前から言われており、我々は手を替え品を替え「それっぽい」ことを繰り返しているに過ぎない。
文脈依存度が強い「コミュニケーション能力」などの非認知能力だけでなく、一見客観的に見える学力評価ですらその客観性を担保するのは困難。
そんな話が続くので、結論としては人事の評価、育成に関わる人からすると苦笑い、という本なのかもしれない。
もちろん著者も能力が完全に評価出来ないと断定しているわけではない。
なんらかの実務的な落とし所はあるはずなのだが、人材育成の世界からは遥か極北にあるので、そういった人間社会の宿命を踏まえて、どう取り組んでいくのか、茫漠と考え込んでしまう。
社会学が好きな人は、きっとこういうドラスティックな論考が好きなはず。
まぁ、ご参考ということで。