こんな記事があって。
キャリア系のビジネスパーソン(兼作家)と、同じくキャリア系を専門とする若手研究者との対談。
内容としては、ほぼタイトルに集約されていると思う。
新規事業の伴走をそれなりに経験したコンサルタントとして、友人からコメントを求められたので、今日のブログネタにしているわけだが、感想としては、どちらかというと違和感の方が先立つ印象。
どうしても「若手目線」「現場目線」に偏っている印象があり、ことはそんなに単純ではないと思う。
まず、新規事業の経験が無ければダメかというと、そんなことはないはずだ。
日本の経営者は経営経験なく経営をしているし、経験のある人間だけをアサインしていたら、リクルートやサイバーエージェントのような会社は別にして、タレント不足で組織が回らなくなってしまう。
それに、「俺がやった新規事業はもっとこうだった!(怒)」なんてされたら害悪しかないわけで、過去の経験を抽象化し、現在の環境に当てはめる能力が重要なのであって、新規事業の経験そのものが大事なのではないと思う。
経営者が新規事業の旗振りをすることは、もちろん会社のリソース配分が機動的になるため、非常に重要ではあるが、それとて機動的なリソース配分が大事なのであって、経営者が旗振りしたから成功確率が上がるのかは、結構判断が難しいところ(原因か結果か、というか)。
さらに言うと、経営者も新規事業だけやっていれば良いわけではない。
起案者には仕事の全てかもしれないが、経営者は新規事業のプロジェクトオーナーになったとしても、2割もリソースを割けないので、経営者のコミットは現実的には難しい(良くも悪くも、新規事業だけ見ているわけでは無い、ということだ)。
リソースの話で言うと、普通の会社というのは遊んでいるリソースが殆どない。
既存事業を維持する投資だけでもカツカツな中で、新規事業にリソースを割くのは、ものすごく「重たい」のだ(「数うちゃあたる」的な開発ができるのは、よほど潤沢か、よほど変わった会社なのだ)。
なので、引用記事は起案者の目線で書かれており、気持ちは痛いほどわかるのだが、視点が少々ミクロに過ぎると思う。
もう一つ、抜け落ちている新規事業にまつわる最大のネックは、殆どの新規事業案が凡庸であるということだ。
「これは面白い!」(=経営者が自らコミットする)というようなアイデアは、簡単なアイデアシートレベルだったら数百件に1件、ユーザーインタビューを実際に行った事業計画書レベルで100件に1件、というのが小生の率直な感想。
「検討してみたら面白いんじゃない」(=経営者が事務局・所管部門に投げる)レベルがその10倍、といったところだろうか。
「これは面白い!」というアイデアは、引用記事で「プレイ」と断罪され、それは小生も共感するところの半端な取り組みでは、そこまで到達するだけの数に届かない。
「面白いんじゃない」も、数十件くらいは必要なのだが、評価されたその1件も、かなりの確率で事業化まで持っていけないので、やっぱり母数は数十件では足りないのである。
小生は今、イノベーティブな企業にするためには、組織開発が重要なのではないかと思っているのだが、数百の新規事業アイデアを求めようとするならば、これは組織の在り方を根本的に変えるしかないと考えているからだ。
そして上記のアイデア出現確率は、組織の中で「これは!」という人材の出現確率とニアリーなのではないかという仮説も持っており、これも結局、組織開発に帰着する。
日本の組織の課題とは、おじさんおばさんを悪者にしても、若者を悪者にしても、氷河期世代を問題にしても、解決しないぜ、というのを感じた次第。
まぁ、ご参考ということで。