新規事業に関わる仕事をしていて、よくクライアントから質問を受けるのだが、新規事業にまつわる常識的に流通している話題の中で、「まぁそうなんだけど、ちょっと違うんだよなぁ」と感じることがある。
小生個人の意見なので、絶対正しいというつもりはないのだが、こういう意見もあるのだなという感じでご理解をいただければ嬉しい。
その1
△ぶっ飛んだアイデアが大事だ
○儲かるネタを見つけてくる
昨日のエントリーでも述べたが、基本的にアイデア力で勝負しないようにしている。
よく、「アイデアは一万人が考え、百人がチャレンジし、一人が勝つ」というようなことが言われており、いくら「ぶっ飛んだアイデア」のように思えても、同じようなことを考えている人たちはいくらでもいる。
むしろアイデア発想に注力するくらいだったら、具体的な商売のネタを掘りに行った方が、よっぽど有意義だったりする。
いま、フランチャイズビジネスで伸びているのが、24時間のフィットネスだそうである。
フィットネスのフランチャイジーになるのは、多くの会社で新規事業とは言わないと思うが、なぜ24時間のフィットネスが伸びているかというと、人を雇わなくて良いから、だそう。
コンビニでも外食でも、複数人を雇う前提だけれど、昨今の人手不足で、FC加盟しても、そもそもオペレーションが成り立たない(24時間のフィットネスは日中に加入受付が一人いるだけで、「あとは勝手にどうぞ」ということらしい)。
なるほど、そうであれば、24時間フィットネスをやるかどうかは別としても、これから考える新規事業は、オペレーションに人手が掛かるものは難しいかもしれないな、という風にネタが活かせるはずである。
こういうことは、「ぶっ飛んだアイデア」を考えようと努力するだけでは、なかなか思いつかないかもしれない。
その2
△抵抗勢力が足を引っ張る
○まともな判断をしているが故に前に進めない
「新規事業をやろうとすると、抵抗勢力に激しく足を引っ張られるんでしょうか?」と聞かれることはあるけれど、そんな漫画に出てくるような悪者というのは、滅多にお目にかかれない。
そんな悪者がいれば、正面から戦って勝てば良いのだが、多くの場面はそうではない。
新規事業というのは、当たり前だが不確実である。
そういう不確実なものは、確実なビジネスで勝ってきた人達からすれば、ロジカルに突っ込むところが満載である。
潰そうと思って突っ込まなくても、今までのビジネス経験からすれば、「素」の質問が、知らず知らずにアイデアの勢いを削いでいく。
それこそ、「確かに面白いけど、品質保証ってどうするの?」みたいなレベルで、非常に「まとも」で常識的な質問ゆえに、熱意をもって検討していた起案者自身も「そう言われればそうだ。あれ?どうするんだっけ…」となり、一気にスピードダウンしてしまう。
この辺りが非常に難しく、外部の人間が呼吸するように新規事業の芽を潰している可能性があり、究極的には非合理な意思決定無くして、新規事業は立ち上がらないのでは、という風にも考えている。
クリステンセン先生の「イノベーションのジレンマ」も正に同じ話だと思っていて、多くの場合、顧客も「いらない」と言っていたもの、すなわち「業界の常識でNo」というものが、既存市場を破壊するのである。
その3
△本業が忙しすぎる
○新規事業に没頭するほどワクワクしない
これは制度設計とか、組織体制でも時々議論になるのだけれど、検討の途中で本業が忙しくなって、前に進まなくなるケース、というのがある。
確かに、今のビジネスパーソンは非常に忙しい。
だから、本業を抱えながら新規事業を検討していて、本業にリソースを取られて検討が前に進まない、ということは理解できるのだが、小生の経験でいうと、本当に「イケるかも!」「ワクワクする」「お客様からすぐにでも欲しいと言われた!」となれば、皆なんとかするものである。
裏を返すと、「本業が忙しくて前に進まない」というケースは、殆どの場合、なんらかの形で壁にぶつかっているのではないかと睨んでいるのだ。
そうなってしまうと、事業案を大幅にピボットさせるか、その時点で検討をストップする方が、起案者にとっても幸せ。
そこを強引に進捗管理をしても、皆が不幸な思いをしてしまうと思う。
長くなってしまったが、取り敢えずこの三つ。
誤解を持ったまま進めていても、どんどんズレてしまい、皆が不幸になるだけでなく、むしろイノベーションが後退してしまうので、敢えて述べさせていただいた。
まぁ、ご参考ということで。