人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

新規事業創出の際に「経営資源」について気をつけること

新規事業を検討する際には、自社の経営資源を活かせるかどうか、という論点は必ず登場する。

もちろん、そこが活かせないと、競争優位が作りにくいからではあるが(活かせないのなら裸一貫で始めるのと変わらないし、そのために本業のリソースが割かれるのだとすれば、既存事業に対する悪影響すらあるからだ)、ここの検証が結構難しいと常日頃感じている。

 

一つは、何をもって経営資源とするかが曖昧であること。

新しい事業を始める際に、これまで積み上げてきた資源がプラスに働くか、マイナスに働くかは全くの未知数である。

 

いざ始めてみると、思いもよらない経営資源が役に立ったりして、コンサルタントという立場からするとお恥ずかしい限りなのだが、小生の経験上は「結果オーライ」だったことが多い。

新規事業の検討プロセスにおいては、自社の経営資源を棚卸しする作業をすることもあるのだが、棚卸しした経営資源から切れの良いアイデアが生まれたことは少ないし、狙った通り活かせた経験も乏しく、突っ込んで棚卸しをしても、あまり意味がないのでは、という印象を持っている。

 

小生のもう一つのキャリアである、転職エージェントの感覚でいうと、キャリアの棚卸しを頑張ってしたところで、実際に転職マーケットにぶつかってみないと何が評価されるかわからない、という感覚に近い(もちろんだからといって、キャリアの棚卸しに意味がないと言いたいわけではない)。

なので、棚卸し作業にパワーを使い続けても、あまり良い展開にはならないんじゃないか、という話。

 

むしろ、自社の好き嫌いとか、価値観に照らし合わせて、どの領域に進んでいくのが良いのか、という試行錯誤を重ねていくほうが、経営資源を活かす道に近付いていくような気がする。

同じくキャリアで表現すれば、「自己分析」をちゃんとやろうぜ、という感じである。

 

経営資源についてもう一つ難点を挙げると、「あると言われていても実際は無い」ことがある点だ。

「我が社には優秀なエンジニア集団が…」「多大な顧客資産と販売チャネルが…」「潤沢な現預金が…」という恵まれた会社だったとしても、ではその経営資源が実際に使えるかというと、殆どの場合が使えないのだ。

 

優秀なエンジニアを遊ばせていたり、販売チャネルを持て余していたり、全く使いみちのない現預金を預けっぱなしにしていたり、なんていう会社は存在しない。

むしろリソースは枯渇しているのが常であり、そういった経営資源を「新規事業に回してもらえませんか」とお願いしようものなら、「冗談じゃない!」というリアクションが普通なのである。

 

これは日本企業が長年に渡りビジネスを継続してきた裏返しで、もはや変化する社会について行くための維持・更新だけで汲々としているからだと思っている。

なので新規事業に投資をするためには、本当は何かをやめる決断とセットでないと、経営資源は割けないのだ。

 

こんなことを言い出すと、新規事業を検討している人たちには極めて不毛なのだが、経営資源を考慮する必要はあっても、あてにしてはならない。

自らの力で新規事業の可能性を証明し、その証明の結果、「お、だったらこっちにもチップを張ろうぜ」という理解を得てから資源配分を変更させる、という流れが作れて始めて、経営資源を活用することができる、というのが実態だと感じている。

 

そもそも何かをやめる決断ができるのなら、必然的に経営資源が浮いてしまうので、このような大変な思いはしなくてよいのだが、現実はそうではないし、この辺に、なかなか新規事業が生まれにくい背景が潜んでいるのではないかと考えている。

後味の悪い話で恐縮なのだが、新規事業を起案する人たちには、それだけの要求が課されていると思ったほうが良いだろう。

 

まぁ、ご参考ということで。