人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「思考の整理学」 読了

まずはリンク。

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

 

先日の「一行バカ売れ」にも事例として出てくる本である。

http://dai19761110.hatenablog.com/entry/2018/06/14/222758

 

書店員さんのPOPで「もっと若い時に読んでいれば…そう思わずにはいられませんでした」というのでバカ売れしたのである(小生もそれで本書の存在を認識したクチ)。

一読した感想は、「まぁ、『学』では無いよね」である。

 

著者による、アイデア発想、思考の整理についてのエッセイというのが正しいかと。

経験上、有効と考えられる方法論を、淡々と展開していく内容で、別にアカデミックな裏付けやエビデンスがあるわけではない。

 

中身に関しては、「そうだよね」という感じで、特に異論はない。

難解でもないし、長くもないのだが、もっとせっかちな人は、こちらを読んでもいいと思う。

 

イデアのつくり方 https://www.amazon.co.jp/dp/4484881047/ref=cm_sw_r_cp_api_PM4jBb6WW5449

これはこれで古典的名著と言われる本である。

 

「思考の整理学」も、「アイデアのつくり方」も、古い本ではあるが、スマホ時代においても通用する考え方だとは思う。

ただ、この手の本に、漠然とした物足りなさを感じるのだが、何故だろうか?

 

本の体裁上、個別具体的な話がないので、フワッとしてしまうというのもあるだろうが、アイデアで何でも解決できるかのような、そのアイデアがポンポン出てくるかのような、読み手の期待値が高くなってしまうのも要因なのかな、と思ったり。

こういうのは、数学の問題を解いていて、どうやったら回答のための「補助線」を発見できるのか、なんていうのと似ているのかもしれない。

 

だとすれば、結局は問題を解きまくるしか、インスピレーションは生まれないとは思うのだが。

解きまくっても、「バイアス」には囚われてしまうので、そこを逃れたい人であれば、濱口秀司さんの一連の記事を参照されるのが良いと、個人的には考えている。

 

https://bizzine.jp/person/detail/31/

まぁ、ご参考ということで。

 

「Think Simple」 読了

まずリンク。

Think Simple ―アップルを生みだす熱狂的哲学

Think Simple ―アップルを生みだす熱狂的哲学

 

 

筆者のケン・シーガルという人は、アップルのクリエイティブを担った伝説的な存在だそうである。

本書では、アップルとの仕事、スティーブ・ジョブズとの仕事を通じて体感した、物事をシンプルに進めていくことの意義、”強さ”が語られている。

 

本書を読んで、iPhoneが世に出て数年経過した頃に、日本のメーカーで携帯電話(ガラケー)を開発していた方に聞いた話を思い出した。

iPhoneの凄さは、その優れたUIにあるのだと、その方は仰っていた。

 

シンプルで直感的に理解できるインターフェースであれば、取扱説明書が要らなくなる(当時のガラケーの取扱説明書は電話帳のようであった)。

取扱説明書が要らなければ、商品のパッケージを小さくできる。

 

商品のパッケージが小さいと、運ぶ時に1パレットに積める個数が増え、物流費が劇的に下がる。

シンプルで直感的に理解できると、グローバルに販売していくことも容易になるし、顧客対応のコールセンターも、問い合わせそのものが減るので最低限で良い。

 

なので、日本メーカーのガラケーiPhoneでは、販売規模も収益率も桁違いになってしまうのだ。

では、そこまで明快なメリットがあるのに、なぜ殆どの会社が複雑になってしまうのか?

 

本書ではその一端が記されているが、シンプルにできるということは、「絶対に外せない、最も大事な要素が見えている」ということでもある。

ビジネスにおいて、物事の最優先事項が見えている、ということは、案外、無いかもしれなくて、そうなると物事がどんどん複雑怪奇になっていく。

 

不要なものを徹底的に排除し、本質的なものだけに集中するというのは、言うは易しで、「本質的なもの」が見えていなければ、そもそも集中できないのである。

本書を読んで、そのシンプルさの威力を再認識するとともに、シンプルさを追求する難しさも、思い知らされたのであった。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一行バカ売れ」 読了

はい、リンク。

1行バカ売れ (角川新書)

1行バカ売れ (角川新書)

 

 

よく読んでいるブログで紹介されていて、積読しておいた本。

コピーライティングのプロの方が書かれた、売れるためのキャッチコピーの指南書。

 

古今東西の豊富な事例を紹介しながら解説されていて、読み物としても面白い。

本書の中では、「何を言うか」と「どうやって言うか」を分けて解説してくれているのだが、「何を言うか」というのが実はとても重要で(世間的なコピーライティングは、「どうやって言うか」のイメージが強いかもしれない)、それは商品(事業)そのものだったりするわけである。

 

小生も、新規事業開発の伴走をしていて、ある局面になると(だいたい折り返し地点を過ぎてちょっと、くらいのところかな)、「キャッチフレーズを決めてくれ」とお願いすることがある。

「誰に」「何を」「どのように」みたいな、コンセプトがおぼろげに見えてきた段階で、キャッチフレーズを決めてもらうと、さらにコンセプトがソリッドになって行く。

 

「何をして何をしないか」「誰のための」「どんな価値を提供するのか」を明文化するイメージ。

チームで新規事業開発をする場合は、チームメンバー間のコンセンサスを図り、一丸となってスパートをかける原動力になる(一人で考えていても、ドライブはかかる)。

 

これはつまり、「何を言うか」を決める作業であり、事業そのもの。

これがバチッと腹落ちすると、一気にスピードが上がって行くし、伴走していて最も快感を覚えるタイミングだったりするのよね。

 

本書の話に戻ると、残念ながら「こうすればバカ売れするコピーが作れます」という安直な方程式はない(当たり前だ)。

注意すべきポイント、参考にすべきメソッドが整理されているので、試行錯誤しながら自分の頭で考えて行くしかないのである。

 

また、最後の最後に、戦略的な構えなしにバカ売れしたら、それはそれで危ないのよ、という注意も一言添えられており、筆者の良心も感じる。

個人的にはとても好きな領域の本だったので、筆者の著作はもう少し掘ってみたいと思った。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

 

余計なことをしている時間はない

最近、同年代からもっと若い方とお会いし、キャリアのお話をしていると、既存の会社組織に対する閉塞感は、もはや収拾がつかないところまで来ているのではないかと感じることが多い。

頑張っている人達と、頑張っていない人達との能力、意欲、人格の差というのが、非常に開いてしまっていて、なのになぜか、できない人達に組織が寄って行って、できる人達のフラストレーションが極限に達する。

 

一番歩みが遅い者に合わせていたら、組織は生き残れない。

にもかかわらず、いつまでも延命にこだわり、先頭を走る人達の足を引っ張る。

 

先頭を走る人達からすれば、もはや余計なことをしている時間はないのにね。

申し訳無いけど、歩みが遅い人は、置き去りにせざるを得ないのかなと。

 

もちろん、歩みが遅いというのと、成果が出るのに時間がかかる、というのは、全然別の話なんだけどね

まぁ、ご参考ということで。

 

 

「ファスト&スロー 上下巻」 読了

とりあえずリンク。

 

著者のダニエル・カーネマン氏はこんな人。

ダニエル・カーネマン - Wikipedia

 

行動経済学の大家であり、ノーベル賞も取っている。

行動経済学インパクトは、それまでの経済学が、どんな時でも合理的な意思決定をする経済主体を前提としていたことに対し、心理学のアプローチから、人間の非合理性をベースにした新しい知見を提示したこと。

 

「新しい知見」については、ネットの記事でも、類書でも良いので、ご参照されたい。

一応拾ってきたリンクを貼るが、もっと面白いネット記事はいくらでもあると思う。

 

https://diamond.jp/articles/amp/145598?skin=amp

何故「類書でも良い」と書いたかというと、本書が絶対的に長いからだ。

 

文体は平易だし、邦訳も悪くないと思うが、上下巻ということで覚悟はしたものの、ちょっと流石に、という感じはする。

カーネマン氏のウィキペディアを引用して気付いたのだが、本書はカーネマン氏の長年の研究実績をほぼ網羅している模様で、それを学術論文ではなく、一般書の体裁に落とし込んだようなので、そりゃ長いわ、である。

 

ちなみに、タイトルの「ファスト&スロー」だが、人間の思考を支配する「早い思考」と「遅い思考」のことである。

この二つには、それぞれ特徴があるのだが、その特徴をおさえておくことで、より正しい(政策も含めた)意思決定ができる、というのがアウトライン。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

社会の変化に敏感でいられるのか

とりあえずリンクをシェア。

gendai.ismedia.jp

 

タイトルはすごく強烈なんだけれど、前編から読んでいただければ、インタビューイーが何故そんな風に考えるに至ったのか、多少わかりやすくなると思う。

それはさておき、本文中にあって、なるほどなと思ったのが、テクノロジーを一旦脇に置いて、未来のことを考えてみる、ということ。

 

たしかに、最近未来のことを考える場合、テクノロジーがセットになることが多かった。

もちろんテクノロジーは重要なのだが、必ずセットなわけでもない。

 

テクノロジーとセットで語られることで、偏った短絡的な見方になるのもその通りだ。

偏ったというのは、何も歪な世界観を指すのではなく、思考からこぼれ落ちる世界が生じるということだ(ジェンダーフリーの話は確かに知っていたけど個人的にはこぼれ落ちていた)。

 

そういう変化に敏感でいられるのか、という問いには、とても身が引き締まる思いなのだが、色々な情報にアクセスできる昨今、そんなに難しいことでもないのかもしれない。

フェイクニュースなんて話もあるが、それとてしばらくしたらなんらかの形で解決出来そうな気もする。

 

むしろ難しいのは、自分が触れらことができた社会の変化を、組織の仲間に理解させることが出来るのか、ということかもしれない。

引用した記事には、大組織が解体して、社員が個人事業主化する流れもあるけれど、社会の変化についていけない組織を、個人が見限って離れていく流れを連想させられてしまう。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

 

ユーザーニーズを掘り当てる

Appleの製品に、AirPodsというワイヤレスイヤホンがある。

AirPods

https://store.apple.com/jp/xc/product/MMEF2J/A

 

小生も持っていたのだが、新しいイヤホンを購入したのを機に、メルカリででも売ろうかなと、ちょっと検索してみた。

誰だかわからない人間が耳に突っ込んだモノを買うなんて、正気の沙汰とは思えないが、そこはメルカリ、バッチリ出品されている。

 

そこで、「なるほど〜!」と感心してしまった。

というのは、新品同様の未使用品が四千円で出品されているのに対し、 右耳用だけ、左耳用だけの単品が、六千円超で出ているのである(一応補足すると、AirPodsは右耳左耳がそれぞれバラバラに独立し、ケーブルもないイヤホンである)。

 

即ち、バラ売りした方が高いということなのだが、ここにユーザーニーズの奥深さを感じるのである。

未使用品は、おそらく使ったことがなくて、商品の価値もレビュー記事等で見聞きした程度の人が、「どうしようかな、新品高いしな」という感じで検討する価格、ということなのだろう。

 

片耳の方は、既に利用価値もわかったユーザーが、片方を無くしてしまったけれど、なんとか復活させたいというニーズを叶える価格。

経済合理性を考えれば、片耳ユーザーも未使用品を買えばいいのだけれど、そうなると片耳のAirPodsは依然残るので気持ち悪い、というインサイトも深読みしてしまう。

 

もちろん、未使用品を買って、残った片耳をまた売れば、完全なAirPodsが手に入った上に、二千円儲かってしまうという不合理が存在するので、小生が見た出品価格は成立していないのかもしれない(不完全市場だ)。

だとしても、それぞれの値付けをした出品者達は、よくよくユーザーニーズを探求した上での判断を下したのだと思う。

 

ユーザーのニーズというのは、本当に興味深いし、それを掘り当てる瞬間もまた楽しい。

こういう仕事をどんどんやりたいものである。

 

まぁ、ご参考ということで。