まずリンク。
筆者のケン・シーガルという人は、アップルのクリエイティブを担った伝説的な存在だそうである。
本書では、アップルとの仕事、スティーブ・ジョブズとの仕事を通じて体感した、物事をシンプルに進めていくことの意義、”強さ”が語られている。
本書を読んで、iPhoneが世に出て数年経過した頃に、日本のメーカーで携帯電話(ガラケー)を開発していた方に聞いた話を思い出した。
iPhoneの凄さは、その優れたUIにあるのだと、その方は仰っていた。
シンプルで直感的に理解できるインターフェースであれば、取扱説明書が要らなくなる(当時のガラケーの取扱説明書は電話帳のようであった)。
取扱説明書が要らなければ、商品のパッケージを小さくできる。
商品のパッケージが小さいと、運ぶ時に1パレットに積める個数が増え、物流費が劇的に下がる。
シンプルで直感的に理解できると、グローバルに販売していくことも容易になるし、顧客対応のコールセンターも、問い合わせそのものが減るので最低限で良い。
なので、日本メーカーのガラケーとiPhoneでは、販売規模も収益率も桁違いになってしまうのだ。
では、そこまで明快なメリットがあるのに、なぜ殆どの会社が複雑になってしまうのか?
本書ではその一端が記されているが、シンプルにできるということは、「絶対に外せない、最も大事な要素が見えている」ということでもある。
ビジネスにおいて、物事の最優先事項が見えている、ということは、案外、無いかもしれなくて、そうなると物事がどんどん複雑怪奇になっていく。
不要なものを徹底的に排除し、本質的なものだけに集中するというのは、言うは易しで、「本質的なもの」が見えていなければ、そもそも集中できないのである。
本書を読んで、そのシンプルさの威力を再認識するとともに、シンプルさを追求する難しさも、思い知らされたのであった。
まぁ、ご参考ということで。