人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

組織の力学と個人の矜持

積読在庫消化。

 

当時の職場の先輩が激賞していて購入し、それっきりだから五年は在庫にしたに違いない。

いやはや積読は罪である。

 

それはともかく。

9度出撃して9度帰ってきた特攻兵、佐々木友次氏に劇作家の鴻上尚史氏がインタビューし、その内容をもとに構成されたノンフィクション。

 

鴻上氏が伝えたいのは、あの戦中の日本軍にあって、個人の思いを貫き通した人物が居たという事実、そして今に続く日本の組織構造、社会構造のダメさ加減。

とはいえ、半藤一利氏とか、失敗の本質シリーズとかを読んでいる人にとっては格別の新しさは無いと思うが、よく知らない人にとっては衝撃だろう。

 

そういう意味では日本人必読なんじゃないか。

そして、組織の力学と個人の思いが相容れず、悩むことは今の日本人にもよくある話。

 

佐々木氏へのインタビューで個人的に感心したのは以下2点。

このような異例な振る舞いが通ったのは、一つには佐々木氏が民間上がりの下士官だったから、と振り返っていること。

 

将校の立場であれば(保身で逃げ隠れする人はいたけれども)特攻の命令が出て生きて帰ってくるのは難しかったはず、と。

偉くなるのも考えものである。

 

もう一つは、とにかく飛ぶのが好きで、それが生き甲斐だったこと。

それを心の支えに乗り越えてきたし、その思いがあるからこそのウデもあったわけで。

 

「好き」は人生を支えてくれるんだなと思い知らされる。

組織とは程々の距離感で、自分の「好き」を大事にする人生こそ、より良いものであると勝手に解釈した次第。

 

まぁ、ご参考ということで。