人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「『ゼロリスク社会』の罠」 読了 ~間違っているのに修正が効かないやるせなさ~

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Kindle Unlimitedからレコメンドされて読む。

日本のビジネス界での「過剰品質」「リスク回避傾向」なんて話と関連した知見が得られるかなぁと思った次第。

 

主に化学物質を取り扱う際に語られる有害性について、本当に危険視するほど有害なのかという観点で、研究者出身のライターが検証した本。

食品添加物であるとかトランス脂肪酸環境ホルモン放射能といった物質の現実的な被害。

 

一方で「天然信仰」とでもいうべき、自然なら安全という誤解。

それらを科学的見地に基づき冷静に比較しつつ、「天然信仰」の怖さにも触れていく。

 

その辺りがサブタイトルの「『怖い』が判断を狂わせる」につながっている。

もちろん有名な話も出てくるし、本書で初めて知った「へー」も多数あるのだけれど、一方で論理的に説明しても人間の「怖い」は取り除かれないのだろうなと想像し、やるせない気分にもなる。

 

世の中には「安全ではなく安心が大事なんだ!」なんていうことを言う人もいたりして、何事につけ安心「感」が重要になるケースはたくさんあるのだけれど、何をどこまでやったら安心「感」が作り出せるのか、というのは大抵曖昧で、関係者に不毛な取組みを強い、「過剰品質」に発展していく。

本書のような科学的啓蒙の書が広く普及し、「『怖い』が判断を狂わせる」世の中にならないでほしいなと、2020年の今だからこそ思ってしまうのである。

 

まぁ、ご参考ということで。