人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「方丈記」 読了 〜人となりを知れば随筆ではなく文学となる〜

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方丈記 (ちくま学芸文庫)

方丈記 (ちくま学芸文庫)

  • 作者:鴨 長明
  • 発売日: 2011/11/09
  • メディア: 文庫
 

 

 

Kindle日替りセールでの推奨と、レビューの高さで思わずポチる。

特に古典にも方丈記にも鴨長明にも思い入れはないのだが、レビューの中に普遍性を謳うものがあり、なるほどそれならということで若干気まぐれで購入、拝読した流れ。

 

方丈記の原文と現代語での解説、そして鴨長明や時代背景についての解説で構成されている。

学校で古文を学んだ人であれば、冒頭の有名な一節も含め、方丈記については一度は目にしたことがあると思う。

 

小生も高校時代に勉強したクチなのだが、何百年も前の人間の心の機微がそこはかとなく伝わってきて、感慨深かったことを記憶している。

もちろん全文は読んでいないので、今回通しで読んでみて、なるほどこんな内容だったのね、という理解はできた。

 

個人的に興味深かったのは鴨長明の来歴である。

出家して庵に籠るという経緯はなんとなく記憶していたのだが、隠遁生活に至るまでの彼の人生は、本書で初めて知ることができた。

 

なるほどなかなか複雑な生い立ちであるし、エリートの挫折というか、文学作品を生み出す精神的な背景が窺える。

方丈記は日本三代随筆、なんて言われるそうだが、鴨長明の出自を知ると、あの無常感だったり災害を多く扱った退廃的な志向(嗜好)が、文学的な色合いを帯びてくるような気がするのである。

 

高校の古文だと「どうやって正確な内容を理解するか」というところで、どうしても終わってしまうのだが、作者の生い立ちや時代背景を踏まえ、なぜこんな作品が作られたのか、深く突っ込めていたら、もっとハマっただろうなぁ、なんて思う。

また、この歳で読み返すと、人生の終い方をどうするんでしたっけ、ということを否応なしに考えさせられたり。

 

たまにはこういう本も良いものである。

まぁ、ご参考ということで。