リンクを張る。
評価が高いのは以前から耳にしていて、機会があれば是非読みたいと思っていた一冊。
そろそろランニングシューズを買い換えようかと思っていたこともあり(笑)、購入。
本書は、ナイキの創業者であるフィル・ナイト氏による回顧録。
大学卒業から、80年代の同社上場までのストーリーと、本書を書くに至った晩年の想いがエピローグ的に綴られる。
一代でゼロからこれだけのブランドを作り上げたストーリーが、まぁ面白くないわけがない。
今のナイキの姿からは信じられないくらいの綱渡りだし、ドロドロしているし、みんな粗野で感情むき出しだし、ずっとピンチの連続で、ちっとも楽しくない(苦笑)。
ナイト氏は正直にエピソードを披露しているけれども、氏も結構イヤな奴だと感じた(取り繕ろうとしないところは美点だと思う)。
聖人君子とは言えない主人公と、苦難の連続のストーリーは、たしかに面白いが、「成功物語を読んでスッキリ!」とは程遠いので、読後感はよろしいとは言えない。
しかし、それこそがリアリティでもあり、だからこそ読者に迫るものがあるのだろう。
また、ナイト氏をはじめとする創業メンバーたちの執念、金儲けへの執着ではない勝利への執念もまた、心を揺さぶる。
本書の高い評価は、この辺りにあるのではないか。
また、一般的には知られていないかもしれないが、ナイキのような製造業というのは、成長が続けば続くほど資金繰りに苦労するものである。
それも成長カーブが急であれば尚のことだし、最後の最後まで株式上場を避けていれば、さらにである。
最近のスタートアップの世界では忘れられかけている、泥臭いビジネスの現実であり、その苦労がアンチテーゼとしてウケたのかもしれない。
本書で存分に紹介されているが、ナイキは日本と縁の深い会社である。
オニツカタイガーの輸入代理店としてスタートし、トラブルになって自社ブランドに展開せざるを得ず、日本の工場に生産を委託。
そのビジネスと資金面を支えたのが総合商社である日商岩井。
ナイキを支えたのも日本企業であれば、潰そうとしたのも日本企業。
出来ることなら、このような情熱を持って、泥臭いビジネスに取り組む人を、支える側でありたいけれども。
まぁ、ご参考ということで。