人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

市場調査についての諸々(雑感)

新規事業開発でも、転職先探しでも一緒だと思うが、その市場が伸びているのか、というのは重要なポイントとして語られることが多い。

しかしこれは結構難題である。

 

既に出来上がったビジネスで、業界シェア上位の会社であれば、その市場動向から各種投資判断を行う意味は非常にあると思う。

しかし、市場規模に比べてシェアが小さいプレーヤー(一桁パーセント以下)とか、新しいアプローチで切り込もうとしているプレーヤーにとっては、市場調査のメリットは薄いように感じている。

 

自社の事業規模に比べて大きすぎる市場は、戦略に対する示唆を何も与えてくれないし、成長性が高いマーケットは競争も激しいからだ。

インドの市場が日本の十倍の人口規模で、なおかつ成長しているから参入しましょう、といったところで、「じゃあどうやるの?」「どうやって競争に勝つの?」という当然の疑問は解決しない(逆に、既にインド市場の20%のシェアを持っていたとすれば、調査の重要性はご理解いただけると思う)。

 

まして、新しい市場を創ろうとする試みであれば、当たり前だが存在しないので調査のしようがない。

なので、とりあえず市場調査の手順としては、まずググることから。

 

そこで一定の肌感覚を掴み、検索からでて来た有料の調査を必要であれば購入する。

手っ取り早いのはその辺り。

 

新規事業開発については、アイデアを高速でPDCAにかける必要があるので、お金のかからないレベルの調査と、顧客を中心としたインタビューでスピードを上げていくことが大事なのだと思っている。

ただ、新規事業開発の市場調査については、別のアングルがあって、会社の偉い方々が、その事業の可能性が見えにくい時に、もっと「市場調査」をせよ、という指示を発せられるケースがあるとも思う。

 

そういった場合は、可能な限りの調査や推論による論証をしつつも、色々な手段で事業の可能性を「共感」してもらえる工夫も必要だと考えている。

最後は蛇足だが。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

 

 

振り回されるな、振り回せ

電通鬼十則ではないのだけれど、振り回される仕事は苦痛だが、振り回す仕事は楽しいのだ。

まぁ、振り回すという表現はちょっと上からだし、マウンティング感があって好きではないが、多くの人に動いてもらう、というイメージが近いかな。

 

部下から上司への「報連相」なんていうのもあるけれど、報連相の極意は、上司から「あれ、どうなった?」って聞かれる前に、先読みしてやることだと思うのだ。

「あれ、どうなった?」って聞かれている時点で、主導権は上司の側にあり、どんなに優れた回答をしても、回答を評価する権限を上司に与えてしまう。

 

上司の心の準備が出来ていないタイミングで報連相を行えば、それにどんなリアクションをするか考えるのは上司のタスクであり、部下はそのリアクションに応じて動き方を変えれば良い。

そのアクションの違いは、仕事の面白さを180度変えると思っていて、仕事が嫌な人ほど、振り回される側、余計苦痛な側に回りがちなので、本当に不幸だと思っている。

 

慣れるまではちょっと大変かもしれないが、いかに「振り回す」か、意識したことがない方は、考えてみても良いのではないだろうか。

まぁ、ご参考ということで。

 

客を選ぶ

小生はこの十年以上、同じ美容師さんに髪を切ってもらっている。

その間、他所で切ってもらったのは、スケジュールの都合で一回だけだったと思う。

 

表参道の駅から十分くらいの立地の店で、もう十数年、ほぼ一人で経営している。

お世話になったきっかけは、仕事の関係で紹介を受け、「是非一度カットに来てくださいよ〜」「ホントですか?ほんとに行っちゃいますよ〜」「えぇ是非是非〜」みたいな感じで通い始め、仕事もプライベートもいろいろあったが、かれこれ十年を超えるお付き合いになったわけだ。

 

最近になって何気なく、「そもそもなんでこの場所でお店を始めようと思ったんですか?」という投げかけをしたのだが、「コンサルタント」などという肩書きの小生が、自らを恥ずかしく思うくらいの、経営の本質が語られていくことになり、深く感銘を受けた次第。

美容師さん曰く、「何処かの住宅街で、オバちゃんの愚痴や世間話に相槌を打ちながら、髪を切ってお金をもらうことは全然できたと思うんですよね〜。でも私は自分の技術とセンスで勝負したかったし、それを認めてくれるお客さんと、良い仕事がしたかったんです。だからそういうお客さんが居る、この場所になっちゃったんですよね〜」とのこと。

 

なんて正しい戦略なんだと、その時点で感動である。

続けて出て来た言葉に、小生は衝撃を受ける。

 

「こんな小さなお店だから、紹介のお客さんしか来ないんですよ。でも、親しいお客さんの紹介でも、最初の電話で『ところでお幾らなんでしょうか?』って聞いて来る人は、お断りしてるんです。わかっている人は、こんな場所でこんなことやっていれば、大体幾らくらいかなんてわかるでしょ?お金の話をして来る人っていうのは、結局高いか安いかでしかでしか判断しない人なんですよ〜。だから、わかっている人に、最高のサービスを提供して、思っていたよりも安いお金を提示する、それが喜んでもらえるし、正しいあり方だと思うんです」と。

ぐうの音も出ない。

 

小生も初めて伺う際、「表参道で一人でやっている孤高のプロか…。一万は超えるだろうけど、二万はいかないだろう…。でも念のため財布には十万入れておこう」ってな感じだった。

会計の際、実際は近所の美容室と全く変わらない金額提示で、「えっ!!こんなんじゃ申し訳ないですよ!」「いやいや良いんですよ〜、〇〇さんのご紹介ですし〜」ということになり、結局十年リピートして今に至るわけだ。

 

そのお話を聞き、なるほどそういうことだったのか、と深く納得したのである。

客を選ぶことで、良いサービスを提供することができ、客も満足し、こちらも長いお付き合いを継続することができる。

 

本当の意味でのウィンーウィンの関係がそこにある。

なかなかできることではあるまい。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

会社にとっての意義

新規事業開発をお手伝いしていて、起案者が一番引っかかりやすいのが、ここではないかと最近感じている。

つまりその新規事業を会社でやる意義、意味合いであり、違う言い方をすれば、「なぜやるのか?」ということである。

 

新規事業というのは、起案者の意志、市場のニーズ、会社の方向性、の三者のバランスの上に成り立つ、とは昔から言われることだが、起案者にとって一番わかりにくいのが、会社の方向性、すなわち会社にとっての意義は何か、ということではないかと思う。

例を出そう。

 

ある起案者が、カレーショップチェーンで新業態開発をしていたとする。

もともとラーメンが好きで詳しく、昨今のラーメンブームによって、拡大する外国人観光客も日本でラーメンを食べるようになっているし、試作品も好評だ。

 

自分の意志にも叶い、市場ニーズの手応えも得られたので、自信を持って会社に提案する。

しかし会社のリアクションは、「ずっとカレー屋をやって来た我々が、なぜラーメンをやるの?」「それで実際勝てるの?」というもの。

 

自分としては、市場の手応えもあり、意義もあると思っているのに、理解してもらえない。

こういう話、たくさん経験している。

 

自分たちがカレー屋だと思っている人達にとっては、どんなに有望だと説得されても、ラーメン屋をやる意味がわからない。

説明を受けても、寧ろ無理なんじゃないかと思ってしまう。

 

ここで重要なのは、新しい提案が、文字通り会社にとってどんな意味があるのかを考え、共感してもらうことである。

「日本を前提にすれば、マーケットは縮小するし、単品では飽きられてしまうので、カレーだけでは生きていけないのは自明。」

 

「そこで、拡大するインバウンドマーケットを捉えるには、彼らに人気のラーメンである必要があり、それはまだ拡大中の市場でなんとか乗り込めそうなタイミング。」

「既存のオペレーションとは齟齬があるものの、バリエーションを持つことによって不確実な市場動向に適応する力を身に付け、安定したポートフォリオ経営に移行する第一歩になりうる。」

 

完璧とはいえないし、これで説得できるともいえないが、この観点での見解が、「会社にとっての意義」である。

この観点を持ち得れば、「いや、同じ目的を実現するのなら、スイーツ業態の方が正しい選択である」といった新たな発想を得ることもできるし、それを踏まえてラーメン業態のアイデアをブラッシュアップすることもできるのだ。

 

会社にとっての意義というのは、ある意味会社を顧客とした時の「顧客目線」を持ち得ているか、ということを問われていると思う。

簡単ではないかもしれないが、よく考えてみていただきたい。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

 

会社の常識、社会の非常識

タイトルを考えてググったら出てきた記事のリンクを貼っておく。

http://diamond.jp/articles/-/117854

 

小生が新卒で入社した銀行では、社内でも「銀行の常識は社会の非常識なんだ」と自嘲気味に語る人がまぁまぁ居た。

実際そうだと思っていたけれど、殆どが理由があって「非常識」であり、説明すれば社外の方にもわかっていただけることも多かった。

 

もちろん説明のつかない非常識もあったけれど。

転職したことがない人は、会社の常識について、それが常識化していることすら気付かないことが多い。

 

転職した人は、前の会社と新しい会社の常識に戸惑い、時にトラブルの火種になることもある。

トラブルの火種になるのは、転職した人も受け入れた側も、それぞれの常識が正しいと信じて疑わないからだ。

 

それくらい常識とは強固で見えないもの。

新規事業のお手伝いをしていると、最初は社外の目線、すなわちその会社にとっての非常識な視点を持ち得るのだけれど、だんだんその会社の人達と同じ目線になって来てしまう。

 

これは良い面悪い面があって、良い面は、その会社の常識が見えてくるので「通りやすい提案」が構築しやすくなるのだ。

悪い面はご推察の通り、発想が乏しくなっていくということ。

 

そこで我々は、ツールを使う。

わりと「枯れた」戦略フレームワークを使うこともあるし、最近はこんなのをよく使う。

https://www.amazon.co.jp/ビジネスモデル-ナビゲーター-オリヴァー-ガスマン/dp/4798146889/ref=oosr

 

これも結局フレームワークなのだけれど、普段とは違う型、すなわち他社の常識や社会の常識にはめ込んで、発想の飛躍を計る。

これは結構有効で、社会の常識を援用して、会社の非常識を作るのだ。

 

とは言え、会社の常識は社会の非常識という自己認識がないと、そもそもそれすらできないんだけれどね。

まぁ、ご参考ということで。

 

 

「どんなヒトが活躍していますか?」

新卒でも中途でも、面接の場面では大体最後の方に、「何かご質問は?」というやり取りがある。

そんな時に、是非聞いてみたら良いと思うのが「どんなヒトが活躍していますか?」という質問である。

 

活躍している人の具体例を聞くことで、自分がその会社で上手くやれるか、という擦り合わせをするのだ。

経歴で答えてくれる会社もあれば、キャラクターで答える会社もあるし、意外と上手く答えられない会社もあったりして、そんなところからも、その企業が働く人の何処を見ているのか、ということが窺い知れたりもする。

 

実際この質問をして険悪な雰囲気になることはまず無いし、回答を受けて気の利いたリアクションもしなくて良い(「ありがとうございます」と答えれば済む)ので、ほぼノーリスクでいろんなことがわかるハイリターンな質問と言えるだろう。

採用のウェブサイトやエージェント経由で伝え聞く、「求める人物像」というのは、たいてい理想像だったり、総花的なイメージでしかなかったり、ひどい時は勘違いだったりする。

 

これ、別に悪気があるわけではなく、ニーズを聞かれて正確に答えられる人はほぼ居ないからだ。

以前も書いたが「理想のタイプ」として語った人物像と、実際付き合っている人が違う、というアレである。

 

新規事業開発の顧客インタビューでは、「フィードバックを求めるな。購買体験を聞け」と申し上げているが、面接の質疑でも同じだと思う。

人材エージェントのマネージャー時代は、メンバーに「どんなヒトが活躍してるかを聞いてこい」という話をしていた。

 

会社によってカルチャーはてんでんばらばらなので、それを確かめる、とても大事な質問だと思う。

まぁ、ご参考ということで。

細部で全体は構築できないが、細部から全体は崩壊するかもしれない、という話(Amazonデリバリープロバイダーに寄せて)

皆さんはこの話題をご存知だろうか?

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/1068372.html

 

通販大手のAmazonが、物流を地域の小規模事業者に委託し、配送トラブルになっている話。

個人的な話で恐縮だが、小生もこのトラブルに巻き込まれたところである。

 

期日までに届かず、在宅していたはずなのにAmazonから不在連絡があり、にもかかわらず不在票も入っていないし、宅配ボックスにも入れてくれない。

そして届けに来たのは、家人曰く「事前に聞いていなければ居留守を使うレベル」の風態・対応だったそうである。

 

これは率直に申し上げて、Amazonの利用を控えようか、という体験である。

・もともと、ヤマトの現場の逼迫ぶりを耳にして、やたらに買うのも申し訳ないなと感じていた

・便利だから利用していたが、代替手段が無いわけではない

・家に大事な家族を置いて来ていて、自分の留守中に良く分からない人間が訪ねてくる状況は不安

・そう思うと余計なものを買い過ぎていた気もするので、浪費防止になるんじゃないか?

となると、小生のAmazon利用熱は急速に萎んでいる。

 

物流という、ECの中では、細部でしかない機能に、全体がひっくり返されようとしている瞬間である。

細部という表現は、物流事業者の皆様には失礼な表現であることをあらかじめお詫びするが、EC事業者の観点からすれば、いきなり自社物流を作り上げることだったり、配達時のUXを上げるところから入ったりは一般的にしないので、全体の中の一部と捉えるのが通常だろうと思う。

 

EC事業を新規に立ち上げようと思った時に、「まず物流は自社で!!」という人はいないし、小生も「ディテールより、誰に何を提供するのかを議論しましょう」と全体観の方へ議論をリードする。

現実として、ディテールを幾ら積み上げても、全体は見えてこないのは、経験上確かだと思っている。

 

しかし、崩壊するときはディテールでも崩壊しうる。

つくづく、全体と細部の設計は難しいなと考えさせられた次第。

 

まぁ、ご参考ということで。