まずはリンク。
セイバーメトリクスという概念はご存知であろうか。
野球選手のプレーを様々な角度から統計解析し、チーム編成や戦略構築に役立てようというモノで、「ビッグデータ」なんていう言葉が流行る前からアメリカを中心に拡がり、今となっては当たり前になったモノである。
メジャーリーグでは全選手のデータが公開されていて、個人が「ベストナイン」を編成し、シミュレーションをかけて誰のチームが優勝するかを競うゲームまであったはず(確か賞金も出たかと)。
物事の法則を見出すのが好きな小生は、以前からセイバーメトリクスに興味があり、その延長で手に取った次第。
著者名はTwitterのアカウント名なのだが、一メジャーリーグファンとして、圧倒的な観戦数と分析を積み上げ、フォロワーも増え、挙句ダルビッシュ選手とも直接やり取りするようになったという人物が記した、プロ野球における戦略、戦術、技術、編成、育成などの最新事情を解説した本である。
小生は野球経験は全くなく、年に数回球場で観戦するだけという変な知識レベルなのだが、知らなかったこと多数だし、当たり前だと思っていたことが実は現在は否定されているとか、「へー」の連続で、とても面白く読ませて貰った。
なるほどなぁと感じたのは、日本の野球は甲子園という「負けたら終わり」の短期決戦で育った人たちが、そのまま長期戦のペナントレースであるプロ野球に移っていて、不合理が温存されているということ。
例えばシーズンの中で「捨て試合」を作れるか、というのは、マネジメント上は意味があると理解できたとしても、日本プロ野球界では難しいような気がする。
いやこれは、明治期の軍隊教育の延長で組まれた学校教育で育った人間が、そのまま会社に入って文化を形成する日本社会の流れと同じとも言える。
超長期戦のビジネスにおいても、日本の会社で「捨て試合」って許されましたっけ、と思うところはある。
それにしても、これは批判の多そうな本だなとも感じる。
本書でも言及はあるが「プロ野球の経験もない人間が何を偉そうなことを」というツッコミは容易に想像がつく。
しかし著者が指摘していることは非常に論理的だし、メジャーリーグの情報を広く理解しており、十分一聴に値すると思う。
それをプロ野球経験がないからといって退けるのは、あまりにもったいない。
要は、相手が素人だろうがなんだろうが、聞く耳を持つという姿勢が大事なのだろうと、身が引き締まる。
「顧客の声を聞く」なんていうが、たとえ長年懇意にしているロイヤルカスタマーだって、提供側ではない以上、こちらの事情を知らない「素人」に変わりはない。
結局「素人」の意見を、ちゃんと聴けるのかどうか。
そして、イノベーションってそういうことでしたよね、と思うのだ。
つくづくダルビッシュは凄いねと(そこかよ)。
まぁ、ご参考ということで。