まずはリンク。
城山三郎氏の人物評は「粗にして野だが卑ではない」以来。
今回は第一生命の創業期の経営を支え、東芝社長、経団連会長の要職に長くあった石坂泰三氏が主役。
「メザシの土光」と言われた土光敏夫氏の先輩格にあたる人なので、個人的にはだいぶん遠いと感じる年代ではある。
サラリーマンとして大成功したと言って良い来歴なので、それだけでは城山氏も取り上げる意欲は湧かなかったそうなのだが、石田禮助氏、五島慶太氏と書き進めていく中で、交友関係に浮かび上がる石坂氏の多面的な人物像に興味を惹かれ、上梓に至ったそうである。
詳しくは本書をあたっていただきたいが、変化の多い人生を送ってきた人である。
偶然をチャンスとしてきたという意味では、クランボルツ先生のキャリア論を彷彿とさせる。
その機会をものにするだけの準備や努力を怠らない人であったことは間違いない。
よく学び、外に機会を求め、表裏を使い分ける賢さも持ち合わせる。
それだけであれば、単なるサラリーマン大成功物語だが、7人の子供たちとの人間関係や、早くして死別した妻への想いなどが、人物像に厚みを持たせ、特に男性読者の心に響くのだと思う。
「粗にして野だが卑ではない」のようなヒロイズムは無いものの、しみじみと味わい深い評伝なので、特に愛妻家の皆さんにお勧めしておきたい。
まぁ、ご参考ということで。