人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

新規事業に関する雑感(2018年末ver.)

この4年半の間、自分なりに一生懸命、企業の新規事業創出のお手伝いを頑張ってきて、いま思うことを記しておく。

お断りしておくが、特定の企業のことを申し上げているわけではなく、沢山のお仕事を頂戴する中で、自分なりに「見えてきたこと」のメモである。

 

①そもそも新規事業を考えられる人材を採用していなければ、まともなアイデアは出てこない。

※「素人の考え」は、やっぱり「素人の考え」。発想力はたかがしれている。

 

②考えられたとしても、組織の心理的安全性と信頼関係がなければ、社員から提案はされない。

※「ウチの経営陣に何言ってもムダ」と思っていたら提案なんかしない。

 

③提案がされても、新規事業に取り組む意思と、組織の価値観がしっかりしていなければ、良し悪しを評価できない。

※結局、やる気と、組織としての好き嫌いが(良くも悪くも)存在しないと、選びようがない。

 

④良し悪しが評価できたとしても、リスクテイクする胆力がなければ、実行に移せない。

※誰かが責任を取る立て付けになっていなければ、「やる/やらない」の決断はできない(合議制ではフィジビリという名の”先送り”になりやすい)。

 

⑤実行に移せたとしても、未知のプロセスを前に進める馬力がなければ、立ち上がらない。

※実行して初めてわかる大変さは、たぶん当初想定の10倍はあるだろう。

 

⑥立ち上がったとしても、適切なタイミングに適切なリソースを投下する判断力がなければ、成功できない。

※いつまでも起案者一人にまかせていたら、スケールするわけがないが、立ち上げ初期の試行錯誤の中で、リソースを追加投入するのは、もの凄くセンスが必要(「やる」意思決定より難しい)。

 

これらは、社内提案制度を導入すれば解決するような問題ではない。

それでも「導入しないよりマシ」という考え方もある。

 

もちろんその考え方は否定しないし、そう言って、導入の営業をかけることも、あるにはあるが、機能しない制度というのは、結構リスキーだと思うのだ。

制度を導入しても、新規事業の成果が生まれなければ、上記②の組織内の信頼関係が毀損するリスクがある。 

 

結局、組織や風土を本格的に変化させる取り組みを、時間をかけて行わなければ、上記のどこかのプロセスで止まってしまい、新規事業が生まれることはないし、その取り組みを、ある程度の覚悟を持って、やり切らなければ、組織の信頼関係を毀損するというリスクを乗り越えることは難しい。

つくづく、「イノベーティブな事業があるのではなく、イノベーティブな組織があるだけ」と思うのである。

 

10年の計、20年の計をもって、目先の制度など不要になるような、イノベーティブな組織に生まれ変わる覚悟を持てるのか?

会社全体の意志が問われている。

 

まぁ、ご参考ということで。