人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路」 読了

リンクを貼る。

老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)

老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)

 

 

将来予測を追いかけていて、更に読んだ一冊。

タイトル通り、住宅にまつわる将来課題を、都市計画や関連諸制度、タワーマンションや高齢化という切り口で解説していく本。

 

たぶん、不動産業界にとってはとても「都合が悪い」本なのではないかと推察する。

この本を読んで、家を(特にタワーマンションを)購入する人が居るとはとても思えない。

 

小生もマンションを購入して、「持つリスク」を嫌という程味わったので(まだ住み続けているが)、本書に書かれている問題点はよく理解できるし、これから起こるであろう問題点も納得である。

昨日の本にも出てくるが、結局は、人は老いていくのに、維持管理コストが増え続けるということが問題なのだ。

 

作ってしまったハードは、維持管理コストが賄えなければ、ゼロではなくマイナスの存在になりかねない。

これはもう、シャレにならない問題なのである。

 

将来、多少のコンパクトシティ化が進んだとしても、その周辺は大量のスラムと、さらにその周辺は荒涼たる廃墟が広がるイメージしか湧かない。

もはや犯人探しをしても意味がない。

 

ハードランディングに備えて、歯をくいしばるしかないのだろうなと、呆然となるのである。

はて、どうしたものか。

 

まぁ、ご参考ということで。

「縮小ニッポンの衝撃」 読了

リンクを貼っておく。

縮小ニッポンの衝撃 (講談社現代新書)

縮小ニッポンの衝撃 (講談社現代新書)

 

 

新規事業界隈では、未来に即した企画が求められていて、その中でも、最も確実な未来予測が人口動態である。

ネット記事等である程度は抑えていたつもりだし、「最終バスに乗り遅れた」という表現があるほど、人口増加には既に有効な打ち手を失ってしまっていることを理解していても、本書は衝撃である。

 

NHKスペシャルで放送された内容を、書籍化したというのが本書の内容。

人口が減少し、財政も破綻している夕張市、30年後の日本の人口構成を既に体現している島根県、首都圏でありながら人口現象の脅威が忍び寄る豊島区、横須賀市の実態を丹念に追っていく。

 

個人的に最も衝撃だったのが島根県の状況で、松江から離れたエリアでは行政の住民サービス運営が成り立たず、予算付けだけをして、後の運営は地域住民の自治に任せるという取り組みを、既に始めているらしい。

UターンIターンを促すイベントに取り組む地域あり、残された住民の福祉に注力する地域ありと、運営は様々だが、今日現在でそうなっているエリアが存在することに驚きである。

 

UターンIターンのイベントに取り組む地域では、実際に移住した住民も出たものの、地域を維持するには明らかに不足していることも明かされ、暗澹たる思い。

また夕張では、人口減少と財政破綻で、既に住民の生存権に関わる事態にまで悪化しており、もはや「地方創生」とか、それをテーマにする新規事業案などが空虚に感じられるほど。

 

かといって、「地方創生を諦める」という選択肢も無く、どうしたものかと思い悩む次第。

全日本人必読の書である。

 

一応、NHKオンデマンドの番組リンクも貼っておく。

NHKオンデマンド|検索結果

 

まぁ、ご参考ということで。

 

 

 

「この日本で生きる君が知っておくべき『戦後史の学び方』」 読了

長いので後半タイトルは略。

 

池上彰氏の著作つながり。

内容はタイトルそのままなのだが、全三部作の真ん中に位置付けられている、ということは読んでから知った(別にこれだけ読んでも違和感はなかった)。

 

「戦後史」なので、政治経済とテーマは広めだが、55年体制とか、自衛隊はなぜこんな形なのかとか、バブル経済はなぜ起きたのか、というようなことが平易に語られる。

氏の著作は、専門の研究者が専門書として書くのではなく、あくまで一般の人(ジャーナリスト)が解説する分かり易さに特徴があるとされているような気がする。

 

と、されているものの、前回読んだ本と併せて感じたのだが、「解説が分かり易い」というところが、氏の本質では無いような気がする。

確かにわかりやすいのだが、「それ以上でもそれ以下でもない」解説、フラットというか、実際は特別に分かり易くなっているわけでもないと思う(詳しいおじさんに聞けば、十中八九、池上氏と同じような解説をしてくれるのでは、というような解説、とでも言えば良いだろうか…)。

 

むしろ、数多ある事象の中から、特定のテーマを切り出してくるところに、彼の腕があるのではないか。

55年体制の成り立ちそのものを、切り出して解説してもらえる機会が、これまでの人生にあっただろうか?

 

55年体制の成り立ちを知ろうと思えば、あれこれの専門文献に突き当たり、膨大な資料から、朧げに自分の知りたかったことが浮かび上がる、ということが普通なのではないか。

それをいわゆる”勉強”というのかもしれないが、そりゃ時間も労力も大変なのである。

 

膨大な事象の中から、重要なテーマを切り出し、テーマが概観できる解説を加え、その解説を積み上げることによって膨大な事象を”掴める”ようにする。

その編集力に、真骨頂があるのではあるまいか。

 

ジャーナリストの面目躍如と言えば、それまでなのだけれど。

仕事術としても、勉強になるなと思った次第。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

「世界を変えた10冊の本」 読了

本読んでばっかり。

世界を変えた10冊の本 (文春文庫)

世界を変えた10冊の本 (文春文庫)

 

 

何を隠そう池上彰氏の本は初めてである。

個人的には「こどもニュース」と「選挙特番」のイメージだけれども。

 

本書は女性誌の連載をもとに書き起こされた本で、タイトル通り、世界的にインパクトがあったと池上氏が考える10冊の本に、紹介・要約と平易な解説を加えていく、という内容である。

10冊の本の一発目は「アンネの日記」なのだが、これによってユダヤ人国家としてのイスラエル建国に繋がるという解説がある。

 

続いて、聖書、コーランと、むしろ本の紹介を通じて、世界がどんなロジックで動いているのかを説明してくれている格好である。

マルクスケインズフリードマンあたりが最後は続くので、そういう狙いの連載だったのだろう(対象女性誌はどちらかというとファッション系なので、よく決断したなとも思うが)。

 

小生、法学部出身なので、経済学系の知識はビジネス書を読む程度であり、改めてこういった切り口で解説されると、なるほどなと勉強にはなった。

日々の生活を過ごしていると、「世界の動き」とは無縁な気もするかもしれないが、金融機関にいた影響か、実は国際政治が経済に影響し、それが個々の企業の戦略、サービスにつながっていくと強く思っているし、その「つながり」なしに新規事業も作れない、とも考えている。

 

すぐに新しいアイデアを考えたりすることには繋がらないかもしれないが、物事を深く考えていくためには、大事なことだろう。

こういうのを教養というんだろうなと。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

 

 

 

 

「ヤバい統計学」 読了

まずリンク。

ヤバい統計学

ヤバい統計学

  • 作者: カイザー・ファング,Kaiser Fung,矢羽野薫
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2011/02/19
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先日読了した「ナンバーセンス」と同一の著者による統計に関する「へー」と唸らせる事例と、そこから学び取れる知見をまとめた書籍(出版はこちらが先)。

ナンバーセンス ビッグデータの嘘を見抜く「統計リテラシー」の身につけ方

ナンバーセンス ビッグデータの嘘を見抜く「統計リテラシー」の身につけ方

 

 

事例には、ディズニーランドのファストパスは本当に混雑解消に役立つのか、とか航空機はどの会社を選ぶのが安全か、といったような、一般市民にも身近で興味を呼ぶ事例が列挙される。

事例を列挙した後、後半にそれらを踏まえた知見・学びがまとめられる構成になっていて、読みやすい本ではあるのだが、その知見を「誰が」「どんな場面で」生かすのか、と考えてみると、政策決定に関わる人たちか、インフラに関わるような民間事業者なのかな、という印象を持った(「ナンバーセンス」も同じだが)。

 

とはいえ、人間というのは、数字の列挙に勝手に意味を見出して、バイアスを感じる生き物、ということを理解するだけでも、意味はあるのかもしれない。

当たり前だが、統計のデータやその背景にある事象そのものには恣意性はない(どのデータを拾うか、という恣意性は置いておく)。

 

そこからどんな意味を読み取るか、というところに恣意性が発生し、その人間の心の動きがコトをややこしくする。

ディズニーランドのファストパスは、実は混雑解消には役立たない、というか、施設のキャパは一定だから、捌ける人数は変わらないし、ファストパスで指定された時間までを並んだと考えれば、ユーザーにとっての”待ち時間”は減らない、ということらしい。

 

しかしユーザーの満足度は非常に高く、問題になることはない。

あくまで心理的な効果しかないのだ。

 

一方、彼の地の高速道路で、渋滞緩和のために信号付きゲートを設置した話が紹介されるのだが(高速道路への流入量をコントロールするらしい)、全体の渋滞時間は削減されたにもかかわらず、ゲートの待ち時間が長いと感じられたために不評となり、政治問題化される。

大論争になった挙句、再度の実証実験を経て、渋滞解消に最適な待ち時間ではないが、少し早く信号が変わるように変更された、という顛末だったそうである。

 

そんな事を踏まえると、問題は客観的な事象・事実ではなくて、人間の心理なのだな、そこを上手くコントロールすることがポイントなのだな、と感じざるを得ない。

そういう意味では、政策決定・インフラ事業者だけでなく、サービスやオペレーション設計に関わる方々にとっても、参考になる書籍かもしれない。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

 

 

 

 

 

波乗りの激しさと難しさ

駆け出しの営業だったころ、「出来る限り顧客の偉い人、できれば社長に会え」と叩き込まれて育った。

それは目の前のクライアントの「担当」を超えていけ、という話でもあり、クライアントとの温かい人間関係に波風を立てる「ザワつき」があるものの、偉い人に会ったからこそ動き出すダイナミズムも体感でき、非常に刺激的なアクションだったりもする。

 

それを更に進展させていくと、クライアントととの実績をもとに、更に格上(クライアントを格付けしているようで申し訳ないが、より大手、より大きなバジェットという意味である)の仕事を獲りにいけ、という風になる。

そのプロセスは、あたかも大きな波に乗って、遥か遠くまで到達するかのような、緊張と恍惚を伴うものである。

 

しかし、恍惚を伴うことの難しさ、というものがあって、ひたすら、より大きな波を目指し続けていると、ある時から、大きな波を、あたかも自らの力として、仕事を獲りにいくようになる。

そうなると、もはや「虎の威を借る狐」となってしまい、実態の伴わない「アカウント」だけが積み上がってしまうことになる。

 

もちろん生産性を問えば、それは正しいかもしれない。

楽だし儲かるのも事実だろう。

 

しかし職業人としては、あくまで波乗りの技術で戦いたいと思うのだ。

大きな波は、臆することなく求めていくけれど、それは、より大きな波を捕まえにいくことで、難易度の高いミッションにチャレンジし、圧倒的なパフォーマンスを発揮するためでありたい。

 

経営としては間違いかもしれないが、その心意気を忘れたら、ただ金儲けを追求するだけの存在に堕してしまうし、そもそも面白くないと思う。

簡単では無いけれど、その心意気だけは、失わないようにしたいと思った今日この頃。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

「発想法」 読了

毎度リンク。

 

泣く子も黙る川喜田二郎先生の名著。

今更読みました、はい(だって新規事業創出の支援なんて、数年前までやると思っていなかったので・・・)。

 

よりによって「思考の整理学」と連続で読んでしまったのだが、率直に言って内容がごっちゃになりそうである。

もちろん川喜田先生は、世界的に有名になったKJ法という形が残っているし、外山先生も偉大な実績があり、優劣を議論するものでもないのだが、いずれも数十年前の書籍で、文系学問の著者の手による同様のテーマで、どうにも似てくるのかもしれない。

 

そうなると、感想も似たり寄ったりで、内容に異論はないし、その通りだと思うのだが、結局は実践のインプットをどれだけやるかにかかっているのかな、という風に思う(昨日のエントリも参照されたい)。

事実と意見を整理するとか、組み合わせて図解、著述するとか、当たり前のことが当たり前に書いてあるのだが、本書の古典としての評価を鑑みると、メソッドが広く評価され、「当たり前」になったのだと考えるべきなのかもしれない。

 

蛇足ではあるが、「男性は〜」「女性は〜」「日本人は〜」「アメリカ人は〜」といった、ステロタイプに感じられる表記があり、その点だけは今の時代にはフィットしていない印象を持った。

古い著作にはよくある話だし、近年ボーダレス化、同質化が進んでいるということもあるだろうから、本書の評価を落とすものではないので、ホント蛇足だが。

 

まぁ、ご参考ということで。