人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「ヤバい統計学」 読了

まずリンク。

ヤバい統計学

ヤバい統計学

  • 作者: カイザー・ファング,Kaiser Fung,矢羽野薫
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2011/02/19
  • メディア: 単行本
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先日読了した「ナンバーセンス」と同一の著者による統計に関する「へー」と唸らせる事例と、そこから学び取れる知見をまとめた書籍(出版はこちらが先)。

ナンバーセンス ビッグデータの嘘を見抜く「統計リテラシー」の身につけ方

ナンバーセンス ビッグデータの嘘を見抜く「統計リテラシー」の身につけ方

 

 

事例には、ディズニーランドのファストパスは本当に混雑解消に役立つのか、とか航空機はどの会社を選ぶのが安全か、といったような、一般市民にも身近で興味を呼ぶ事例が列挙される。

事例を列挙した後、後半にそれらを踏まえた知見・学びがまとめられる構成になっていて、読みやすい本ではあるのだが、その知見を「誰が」「どんな場面で」生かすのか、と考えてみると、政策決定に関わる人たちか、インフラに関わるような民間事業者なのかな、という印象を持った(「ナンバーセンス」も同じだが)。

 

とはいえ、人間というのは、数字の列挙に勝手に意味を見出して、バイアスを感じる生き物、ということを理解するだけでも、意味はあるのかもしれない。

当たり前だが、統計のデータやその背景にある事象そのものには恣意性はない(どのデータを拾うか、という恣意性は置いておく)。

 

そこからどんな意味を読み取るか、というところに恣意性が発生し、その人間の心の動きがコトをややこしくする。

ディズニーランドのファストパスは、実は混雑解消には役立たない、というか、施設のキャパは一定だから、捌ける人数は変わらないし、ファストパスで指定された時間までを並んだと考えれば、ユーザーにとっての”待ち時間”は減らない、ということらしい。

 

しかしユーザーの満足度は非常に高く、問題になることはない。

あくまで心理的な効果しかないのだ。

 

一方、彼の地の高速道路で、渋滞緩和のために信号付きゲートを設置した話が紹介されるのだが(高速道路への流入量をコントロールするらしい)、全体の渋滞時間は削減されたにもかかわらず、ゲートの待ち時間が長いと感じられたために不評となり、政治問題化される。

大論争になった挙句、再度の実証実験を経て、渋滞解消に最適な待ち時間ではないが、少し早く信号が変わるように変更された、という顛末だったそうである。

 

そんな事を踏まえると、問題は客観的な事象・事実ではなくて、人間の心理なのだな、そこを上手くコントロールすることがポイントなのだな、と感じざるを得ない。

そういう意味では、政策決定・インフラ事業者だけでなく、サービスやオペレーション設計に関わる方々にとっても、参考になる書籍かもしれない。

 

まぁ、ご参考ということで。