人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「ハードウェアのシリコンバレー深圳に学ぶ」 読了 〜この領域で勝つことはもはや難しい〜

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深センには残念ながら未だ行ったことがないのだが、凄いという噂は色々と聞いていて、興味を持っていた。

実際に20年近く現地で関わってきた著者の経験に基づく本ということで、早速読んでみた次第。

 

著者は現在も彼の地で製品製造のアレンジを行う仕事をしているのだが、台湾、深センと場所を移しながら、製造委託、現地製造、製造アレンジと徐々に領域をシフトしてきた経緯の振り返りと、現地の変化をまさに経験者として語っている。

本書の最後は、日本の製造業に対する提言という形で締めているのだが、20年間あのマーケットで戦ってきた人物の語る言葉は強く、説得力がある。

 

深センが凄いと感じたことは、製造の様々なプロセスが完全に分断され、それぞれのプロセスを担う中小企業が膨大に存在し、ダイナミックに連携しながら最終製品を形にしていくという構造である。

その構造によって、日本のそれと比べて、納期3分の2、コスト半分、最低ロット10分の1、ただし品質にバラつきあり、という価値を実現している。

 

現地の人件費はもはや安くはないと言われるが、日本でも大企業の下請けの中小企業が色々と「飲み込んで」来たように、「飲み込む」勢いの中小企業がうじゃうじゃ存在して、こういったプロセスが成立しているのではないかと思う。

「こんなものが作りたい」と思ったら、それに必要な部品、基盤、ソフトウェアなどを列記したブックレットがあり、そのパーツパーツを担う企業が山程あるので、すぐに開発ができる。

 

また、ロゴを貼るだけという製品もあるので、もはやメーカーなのか商社なのかよくわからない商取引だって可能。

Amazonで見かける、同じ画像で商標が違うだけのデジタルデバイスは、多分これなのだろう。

 

このあたりのダイナミックなエコシステムは、今から日本が真似しようとしても、勝つのは難しいと率直に感じた。

とはいえ、こういうのはデジタルデバイスだから成り立つ部分もあって、アナログな要素があったり、プロセスが長い製品に関しては、中小企業の組み合わせで作るのはちょっと難しいし、最終的にロットが多いものは大企業が勝つと思うので、そのあたりが日本企業の勝負どころではなかろうか。

 

それにしても、深センの出発点は、秋葉原の電気街を真似するところから始まったようで、なんだか卓球王国の座を奪い取られてしまった時のような切なさを感じるのは、小生だけだろうか。

小生だけか(苦笑)。

 

まぁ、ご参考ということで。

「大人のためのメディア論」 読了 〜フェイクニュースの時代に〜

まずはリンク。

 

毎度、Kindleデイリーセールと高評価レビューに乗せられて買ったわけである。

学生時代に、フーコーとかデリダとかマクルーハンとか、現代思想社会学的なジャンルを齧った人間としては、思わず食指を伸ばしてしまった次第。

 

著者の石田氏はこんな人。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E7%94%B0%E8%8B%B1%E6%95%AC

 

前掲の「フーコー」とかの名前や理論の概略を存じ上げない人に、この手の話を説明するのは難しい。

学術的な意味でのメディアは、一般用語としてのメディアよりかなり広い概念で、人と人との間を繋ぐもの、くらいの意味合い。

 

本書では、古代の壁画や活版印刷、ラジオ、テレビ、インターネット、スマートデバイスというメディアの変遷を振り返りながら、人間とメディアの向き合い方がどう変わってきたか、これからどう変わっていくか、それに対してどのような向き合い方があるのか、という論旨を展開していく。

社会人向けの6回講座を書籍化したものなので、内容は平易だと思うし、そう言われれば大学の一般教養の授業を受けているような趣がある。

 

しかしまぁ、この手の分野は多くの人の関心を呼ばないということも個人的には理解しているし、「21世紀のメディアはコンピューターが自己完結する(コンピューターにしかわからない)コミュニケーションを生成するので、人間はそれを紐解く武器を持たねばならない」と言われても、多くの人は「そんなの気にしすぎじゃね」「SFじゃあるまいし」というリアクションだと思う。

とはいえ、昨今の話題でいうと、SNS上でのフェイクニュースの拡散にどう対処するか、という話があって、著者の言う「武器」というのは「リフレクション=回帰≒内省」ということなので、ちゃんと距離をおいてメディアと向き合いましょうね、という意味では、有効な視座を提供してくれているものだと思う。

 

それにしても、電子書籍と紙の書籍の違いを踏まえた、紙の書籍の意義を語るくだりを、Kindleの音声読み上げで聞いている気分は、なんとも複雑なものであった(苦笑)。

現代思想にかつて興味のあった方なんかは、アップデートの一冊としては良いのではないか。

 

まぁ、ご参考ということで。

「道迷い遭難」 読了 〜原理原則の大事さと余力を持つこと〜

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ドキュメント 道迷い遭難 (ヤマケイ文庫)

ドキュメント 道迷い遭難 (ヤマケイ文庫)

 

 

たまたまKindleのデイリーセールで目にしてしまったのだが、レビューも高評価で、インドア派の小生も興味を持った。

ビジネス、マネジメント的には「失敗学」として、なにか活かせる要素があるのではないかと思い、拝読。

 

2000年頃に実際にあった、7件のケースを、著者による丹念な取材をもとに紐解くドキュメント。

それなりのベテランから、家族連れのハイカーまで、ケースのバリエーションは豊かである。

 

怪我の程度で言えば、1件目が一番悲惨といえば悲惨だが、遭難に至る経緯は、なんだか「うわぁ・・・」「志村うしろ〜!」的な場面の連続で、シリアス過ぎて非常に楽しくないのだが、だからといって本書の評価を下げるものではない。

インドア派の小生は初めて知ったのだが、「山で道に迷ったかなと思ったら、すぐに引き返す」「沢に降りてはいけない(下らずに登る)」というのが鉄則なのだそう。

 

しかし、本ケースの皆さんは、ことごとくそれをしない。

疲労が蓄積してきてしまうと、「また引き返すのは面倒だ」「もう少し下れば山道にたどり着くのでは」みたいな心理で、どんどん誤った方に進んでしまう。

 

そして一度誤ってしまうと、焦りから冷静な判断ができなくなり、更に間違ってしまう。

これ、まさに行動経済学で明らかにされた、サンクコストの話。

 

 

本書には自力で帰還できた女性の話も出てくるが、それはやっぱり途中で冷静に戻れたところがあったと思う(遭難するタイミングは冷静さを失っていた感じがする)。

行動経済学でも色々なことが明らかにされつつあるが、”原理原則”はやっぱり曲げちゃいけないんだな、ということと、冷静な判断を持つためには、特に体力的な余力が絶対に必要なのだな、ということが学び。

 

「ウチの会社(業界)は特殊だから」「ほんとは駄目なんだけどねー」を口癖にしながら、残業だらけのブラックな環境で働いていると、絶対遭難するんだろうな(笑)。

くわばらくわばら。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

「図解 ワイン一年生」 読了 〜何事にも理屈がある〜

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図解 ワイン一年生 (SANCTUARY BOOKS)

図解 ワイン一年生 (SANCTUARY BOOKS)

 

 

ワインは飲みますよ、実際。

しかし解っているかと言われれば、ほとんどの日本人同様かなり怪しいということで、Amazonからのレコメンドを受けて、レビューも高かったので拝読した次第。

 

読む前の期待値としては、ワインに詳しくなるのみならず、下記のような知見も得られたらな、というところ。

dai19761110.hatenablog.com

 

本書の筆者はもちろんソムリエで、マンガコンテンツを挟みながら、初歩の初歩の道しるべを解説しよう、という一冊。

初心者にとって高難度の「シャトーなんたらかんたら」みたいな用語の解説は後回しにして、ブドウの種類の解説から入るのがわかりやすい。

 

オタク的な文章、マンガコンテンツは好き嫌いが分かれると思うが、解りやすさには間違いなく貢献しているので、小生としては良しとしたい。

若い頃の道楽のおかげで、本書で紹介される「高級シャトー」のワインは結構な割合で飲んんだことがあるというのがビックリだったが、それは別としても、「ブドウの種類」という切り口ひとつで、あれだけ難解に感じられたワインの世界が、スルスルと紐解かれるのは非常に心地が良い。

 

今更ながら、何事にも理屈があり、それを抑えれば理解は容易なのだと思い知らされる。

ワインに対する欲望を喚起されつつも、難解な目の前の仕事を紐解く理屈ってなんなのだろうと、小生は考えてしまう。

 

ライトな教養書と雖も、学ぶところ大なりである。

まぁ、ご参考ということで。

「これからのエリック・ホッファーのために」 読了 〜勇気を持って学び続けよ〜

まずはリンク。

これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得

これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得

 

 

ここしばらく、イノベーションの源泉たる個人のモチベーションを理解したくて、幅広めに読書する中で行き当たった一冊。

在野の研究者である著者が、先達の在野研究者の評伝を記していて、Amazonのレビューも高かったこともあり、拝読。

 

日本の著名だったり、そこまででもなかったりする在野の研究者16名の来歴、研究成果、アカデミズムからの評価などを列記しつつ、在野の研究者に向けた教訓を、四十項目に整理している。

研究内容そのものには深く踏み込んでいないので、平易でわかりやすく、時々ブログの文章のようなライトタッチの記述もあったりで、思いのほかスルッと読める。

 

なんとなく、在野の研究者である著者自身を鼓舞するために書かれているようなニュアンスが感じ取られ、それはそれで微笑ましい。

本書で取り上げられる人々は、それこそタイトルのエリック・ホッファーのように

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%83%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC

生計のための仕事に取り組みながら、生涯にわたって研究を続けた人もいれば、まぁ東大まで出たけれどもアカデミズムに興味なく在野で生き抜いた人もいたり、それぞれである。

 

こういった人々を受け入れられないアカデミズムがどうのこうのと申し上げるつもりは、本書も小生もないのだが、はっきり言えることは、みんな純粋な思いで研究に取り組んでいて、故に過ちを犯すこともあるのだけれど、教授になりたくて研究しているわけではなかったということ。

そりゃあ人間だから、名誉は欲しかっただろうけれど、名誉欲で在野の研究は続けられないはず。

 

最近は出世したいサラリーマンも少ないからちょっとアレだけど、社長や部長になりたくて仕事してる奴が、尊敬されるような良い仕事しますか、という話にも通じるのかもしれない。

モチベーションの源泉は…まぁやっぱり自分の好きな気持ちを大事にするというか、そこから目を背けないことなんだろうな、と思う。

 

研究の続け方は人それぞれだから、変に縛られる必要もない。

だって、好きでやっているんだし、そのことを忘れてはいけないのだ、とも感じた。

 

まぁ、ご参考ということで。

「顧客起点マーケティング」 読了 〜n=1の深いインサイト〜

リンクを貼る。

たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS)

たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS)

 

 

Facebook上でお勧めする友人があり、著者の在籍した企業に小生もほんの少しだけ関わりがあったため、興味を持って拝読。

もちろんマーケティング分野はよく読むようにしており。

 

外資大手、日本企業、スタートアップ企業などでマーケティングの要職にあった著者が、自らの経験とプロとして学んだマーケティングのノウハウを解説する一冊。

著者独自のフレームワークもあるし、販促・マーケティングブランディングを統合的に扱いながら、スマホネイティブ/デジタルディスラプション時代にどのような戦略を構築すべきか、という論点まで示されている。

 

非常にわかりやすく、実践的であり、個人的にはメモを取りまくったのだが、実践の難易度はちょっと高そう。

統合的な取り組みであり、アドテクノロジーも視野に入っているので、経営の承認を受けたチームで形にしていく感じだろうか。

 

非常に共感を覚えたのは、本書のタイトル通り、たった一人のユーザー分析から入るところ。

たった一人のユーザーインサイトを、とことん深く掘り下げるのである。

 

小生も新規事業開発の伴走時には、「誰に勝ってもらいたいですか?」「その一人は架空のペルソナではなく、実在する人で、その人は絶対買ってくれますか?」なんていうことを聞いたりする。

リクルートでも同じ趣旨で「n=1の深いインサイト」という言葉が存在したりする。

 

一人絶対買ってくれれば、十人が買ってくれる可能性はあるけれど、架空の人物やリサーチは購入を約束してはくれない。

それくらい、深いインサイトは大事なのである。

 

本書でも、その重要性が全体を通して語られており、実際のエピソードも散りばめられているから、読み飽きないと思う(読者対象は、マーケティング初心者というより、実務で多少齧っている中級者向けというところかもしれない)。

巻末のブックリストも素敵なので、さらに知識を深める入り口としても良いのでは。

 

読後の第一印象は、ハーバードビジネスレビューなんかで目にしても全然違和感のないクオリティだな、というものである。

是非ご一読あれ。

 

まぁ、ご参考ということで。

”試用期間”の過ごし方

試用期間についてはご存知だろうか?

転職するときに初めて知る人も居るかもしれない。

 

一応解説のリンクを貼っておく。

試用期間中に解雇はできる?試用期間の法的性質や注意点について解説!

 

解釈上は「解約権留保付労働契約」ということだそうである。

労働契約は交わすけれども、解約(解雇・退職)の権利を棚上げしていつでも出せるように置いてある、というような理解だろうか。

 

とはいえ、実際に働いちゃっているわけだから、「明日から来なくていい」「明日から来ません」というほど簡単ではない、というより、ほとんどの会社では、普通の社員と待遇も責任も変わらないと言って良い。

というのが一般的な話で、此処から先は、実際に結構な回数転職し、またエージェントとして色々な人の転職に立ち会った小生の経験から、転職する側・雇われる側の観点で述べておく。

 

まず、試用期間のタイミングでクビになるという人には、お目にかかったことはない(小生も経験はない)。

エージェントとして直接・間接に関与した中で、ロクでもない会社に入ってしまったが故に、試用期間満了をもって退職した人は居るが、決して多い数ではない(早期でお辞めにならざるを得ない会社を紹介してしまったことに関しては、お詫びしてもしきれない)。

 

「解約権留保」といっても、手続き的には通常の社員より解釈上わずかにゆるいだけだから、そこが歯止めになっているとは言えよう。

エージェントであれば、転職をお手伝いした方がその後に活躍されているか、採用していただいた企業にフィードバックを貰いに行くのだけれど、入社前の期待値を多少下回っていたとしても、試用期間終了後に頑張ってもらいましょう、というのが殆ど。

 

そして、大半の企業が、転職して受け入れた社員の試用期間なんか気にしていないんじゃないかと思う。

人手が足りなくて外から雇うような職場だから、いちいち三ヶ月とかの試用期間の管理なんか、誰もする暇がないのではないか。

 

小生も何度か、「無事試用期間も終えまして、ますます頑張ります」というような殊勝な(笑)ことを言ったことがあるが、みな「もうそんなに経ったんですね、忘れてました(笑)。」というばかりである。

もちろんそれは、転職の導入が上手くいった、そのための努力をした、ということだけれど、少なくとも「並」の努力をしていれば、それほどドキドキする必要は無いと思う。

 

転職経験者として他の人に何とアドバイスするかは、実は非常に難しいのだが、転職後のキャリアも長距離走だし、新しい環境でなにかと緊張しがちなので、変に焦る必要は無い。

しかし個人的には、最初の試用期間は、スタートダッシュと置いて、職業人として最大値の努力をするようにしているのも事実。

 

なんだか、スタート台の角度が違うと、その先も違うような気がしてしまうのだ。

キャリアの話って再現性がないので、普遍的に当てはまるとは思わないのだけれど。

 

モーレツサラリーマンみたいで時代遅れなのかもしれないが、やれる気力のある方は是非。

まぁ、ご参考ということで。