まずはリンク。
人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)
- 作者: 中川毅
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/02/15
- メディア: 新書
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著者の中川氏はこういう人。
昔からブルーバックスは好きなのだ(30冊は読んだと思う)。
内容はタイトル通りなのだが、中川氏の代表的な研究は、福井県の水月湖の底にある地層の年代測定研究である。
10万年サイクル、2万3千年サイクルで起きる地球の公転・自転の変容が、気候にどのような影響を与えるかに続き、それをどのように測定するのか、そして水月湖の年代測定が世界的に奇跡と言われるのは何故なのか、それらの研究から得られた10万年の気候変動とは、どのようなものなのか、が淡麗な文章で綴られている。
読み始めたら最後、知的好奇心をグイグイと刺激し、「あとがき」まで離してくれない。
昨年読んだ、「フェルマーの最終定理」並みの面白さであった。
詳細は本書を是非一読いただきたいのだが、小生なりに理解したところを、少しだけ述べておく。
人類が向き合っている地球温暖化の問題は、確かに大きな問題なのだが、ホモ・サピエンスが経験してきた、この10万年の気候変動というものは、地球温暖化すら霞んでしまうくらいの、非常に激しいものであった。
その非常に激しい変動は、一人の人間が人生の中で体感しうるくらいの、短いスパンで訪れてきたのである。
そしてその非常に激しい変動は、近い将来起きないとは言い切れない。
現代はたまたま気候が安定していたけれども、そろそろ安定期も長くなってきたからだ。
では、非常に激しい気候変動とは、どんなものか。
1993年の冷夏を憶えているだろうか?
米の備蓄がなくなり、タイ米を緊急輸入したあの年である。
翌94年は酷暑だったのだが、あんな変動(では済まないレベル)を毎年のように繰り返すという状態が続くのだ。
食料供給の観点だけでも、すでに人類存亡の危機。
気候変動の問題というのは、そういった事態も見据えて、これからの未来を考えていかねばならない、ということを思い知らされた。
しかし、著者の中川氏は、研究成果も素晴らしいのだが、書き手としての能力も非常に素晴らしいと感じた。
我々素人でも理解しやすく、「自分ごと」として感じられるような論理構成をし、時に研究者としての苦労や人間味を感じさせる文章は、他の著作への期待を嫌が応にも高める。
良い本・良い書き手に出会えたものである。
まぁ、ご参考ということで。