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「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)
- 作者: 小川さやか
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2016/07/14
- メディア: 新書
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こちらもアマゾンのセールで目にしたのがきっかけだったろうか。
何となく、「多極化するグローバル経済」という流れが小生のイメージにあって、ある種オルタナティブな動き、というのも頭に入れておきたいと思ったのである。
本書は、文化人類学の著者による雑誌連載を、新書の形にまとめているのだが、カラー写真が乗っているだけで、トーンは論文に近いので、読みにくい人はいると思う。
それはともかく、アフリカ開発途上国の、市井に生きる人々の経済活動をフィールドワークで追った内容が中心になっている。
「明日のために今日何か準備をする」という資本主義的な考え方とは無縁の、「場当たり的その日暮らし」とでもいうような経済活動の実態が綴られて行く。
とはいえ、太古の昔から存在する個人の経済活動と一線を画しているのが、グローバル化とスマートフォン経済の浸透である。
彼らは飛行機に乗って中国に安く商品を仕入れに行き、アフリカで販売する。
仲間との資金融通を、モバイル決済で行う。
販売するものはコピー品も含まれるし、まぁ関税もかからない世界の規模なので、要するに”地下経済”なのであるが、これが結構な存在感を示しつつあるというのは、ビジネスを考える仕事をしている人間としては、一考に値する話だと思うのだ(具体的なイメージは沸いていないが・・・)。
一方で、著者も冒頭のあたりで述べているのだが、我々と縁遠い価値観・文化を追っていると、我々の価値観・文化が息苦しいものに感じられ、”文化人類学的観察”と言いながらも、憧憬の念(=バイアス)が入りがちである。
本書も、そこかしこに憧憬の念が入っているような気がしなくも無いが、我々から離れたところで、21世紀らしいグローバル化・テクノロジーの恩恵を反映した地下経済のダイナミズムというのは、我々のビジネスシーンでも、大いに考えさせられるテーマである。
個人的には「幾ら何でもテキトー過ぎるだろ」という風には感じるし、本質は「小口分散しすぎているので個人としては潰れないけど大儲けもできないモデル」だな、とも思った(タフで粘り強いけどね)。
まぁ、ご参考ということで。