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イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
- 作者: クレイトン・クリステンセン,玉田俊平太,伊豆原弓
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2001/07/01
- メディア: 単行本
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原著は97年刊行とのことなので、20年以上経過しているから、ビジネス書としては古典の部類に入るであろう。
今なお読み続かれるということは、それだけの示唆に富む本ということでもある。
一応、小生なりに解説をしておくと、優良企業は、既存の技術・ビジネスモデル・顧客に最適化された組織ゆえに、「海のものとも山のものともつかない」破壊的なイノベーションに資源配分できず、遅れをとってしまう(最悪は淘汰されてしまう)ものであるという分析と、それに対する処方箋を述べたものである。
「ジレンマ」が起きる必然(と言って良いだろう)の分析は、豊富な事例を引き合いに、精緻に積み上げられており、圧巻である。
ポイントは、破壊的な存在は大抵、ローエンドの、安くて性能が低いが、既存品と違う特性があるところから始まる、というもの。
既存のプレイヤーも当然研究しているが、顧客に聞けば「いらない」と言われるし、既存商品より儲からないから手を出さない。
しかし、新規参入のプレイヤーが、「違う特性」の生きる新しい顧客、新しい利用シーンを開拓し、普及が始まると、(そのあとは産業によって異なるのだが)技術向上とともにハイエンドを侵食したり、新しい顧客がスタンダードになって、既存品市場そのものが衰退していく、という流れである。
その流れは、既存ビジネスの「深堀り」でも到達できないし、顧客の声を聞いても出てこない、というところに、本書が提示した最大のインパクトがあるだろう。
なお、それに対する「処方箋」も明快に記載してあるが、基本的には上記の通り、新たな技術に対して、違う組織構築、違う顧客開拓を実施し、トライアンドエラーを図っていく、というものである。
まさにその通りにすべきだと思うが、儲かるかどうかわからないビジネスを、小規模といえ別組織で運営していく決断は、既存の事業に最適化された組織では、結局のところ高難度な意思決定ではないかな、とも感じる。
ちょっと意地悪な言い方だが、正しい示唆に富み、実行可能であれば、すでにそのアプローチは常識になっていて、20年も読み継がれないのではないかと思ったり。
とは言うものの、正論というのはどんな時も、諦めず愚直に実行し続けなければ、社会がより良くなることは起こり得ない。
今まさに、多くの企業でイノベーションが求められているタイミングだからこそ、改めて読まれる価値がある本だと考えている。
オープンイノベーションも、ボトムアップの提案制度も、事業のタネを作るために有効な方法論だと思うが、この「ジレンマ」を解決するための体制を持たなければ、結局タネは育たず枯れてしまう。
経営者の方々、イノベーションを期待される経営企画系の方々、事業そのものを作る方々で、まだ読んでいない人は、是非ご一読を。
最後に、本書の難点を挙げるとすると、少々長い、というのがあるので、その点はご覚悟を。
まぁ、ご参考ということで。