「インテルとファナック」を読んで、「これは深化と探索だなぁ」と感じられたので、「深化と探索」を解いているこんな本を読む。
この本が「深化と探索」について書いてあるか、なぜ読む前から知っているかというと、本書の解説を書いている入山先生の本を読んでいるから。
「深化」というのは既存事業の深掘り・オペレーション改善の追求であり、「探索」は新たな事業の目を探し素早く試行錯誤を行うことを言う。
本書では「深化」と「探索」それぞれを別々の組織に分けるべきであり、それを併存させるためには卓越したリーダーシップ(経営者、事業リーダー)が必要であると説く。
それはそうなんですよ。
新しいことは既存事業とは違う。
違うから新しいというトートロジーにも聞こえる当たり前の話であって、混ぜたらいけない=混ぜたら新しいことにならない、のである。
なのになぜ人は混ぜるのか。
一つは、オペレーションを「深化」させてきた観点からすると、「探索」の側はレベルが低くバカみたいに見えるからだ。
もう一つ、既存のオペレーションを別の分野に持ち込んで成功することがあるからだと思う。
リチャード・ブランソンはヴァージングループの成功をそのように評価していて、彼らの顧客サービスの概念を、その感覚がない業界に持ち込むことが拡大の秘訣だったと述べている。
しかし、トヨタ生産方式を日本郵便に持ち込もうとして上手くいかなかった事例を引き合いに出すまでもなく、全てのオペレーションが別の分野に持ち込んで成功するわけではない。
優れたオペレーションであればあるほど、その分野固有の尖り方をしていく筈で、ヴァージングループの場合は、顧客サービスという人間の裁量の余地が多い分野だからこそ、上手くやれたのではないかと思う。
いずれにせよ、イノベーションの核となる新規事業、「探索」は、既存事業からすれば荒削りで儲からずバカみたいなものに見える。
それをしっかり別の組織で守って継続できるのかという経営者の見識と胆力が問われるし、そういう視点で見られていることを理解しながらも、卑屈にならずやり切るだけの事業リーダーの資質も問われる。
昔から口を酸っぱくして言ってきたんだけどね。
師匠は昔「高度に繁栄した文明は衰退あるのみ」と仰っていたことがある(どういう文脈かは忘れた)。
オペレーション追求の果ては、衰退が待ち構えている。
だからこそ、無駄と思われる新しいチャレンジが必要なのである。
まぁ、ご参考ということで。