人材紹介の仕事をしてまだそれほど年数が経っていなかった頃の話。
主にベンチャー企業のオーナー経営者をクライアントとしていたのだが、日々の仕事は、ボヤッとしたオーナー経営者のやりたいこと、求めることを、如何に先回りして考え、擦り合わせをし、言語化するか(=求人票に落とすか)というものであった。
求人票の文言一つ一つに狙いがあり、求めるターゲットに、最も刺さるワード、表現を散りばめていた(つもりではあった)。
さて、ある程度場数をこなせるようになり、少し余裕を持てるようになって周りを見渡してみると、業界には外国人のヘッドハンターというのが存在するということがわかる。
英語圏のクライアントと、英語圏のキャンディデイトとだけ会話しているのかと思いきや、日本のクライアントと、日本のキャンディデイトとも、ビジネスをしているらしい。
当時の小生は、それが謎で仕方なかった。
こんなボヤッとしたオーダーを言語化し、キャンディデイトを口説く作業など、ネイティヴでなければ出来ないのではないかと。
片言の日本語や、日本人向けの英語では、絶対に伝わらないのではないかと。
その後、縁あって外資系グローバル企業の採用をお手伝いすることがあり、その疑問が氷解する。
そう、一般に外資系企業では、言語化、即ち求人票を書くのは発注側の人事の仕事で、エージェントはそのスペックに見合った人材を紹介するのが基本なのだ。
「惜しい」人材については、発注側と相談する必要があるが、そうでなければ、それほどハイコンテクストなコミュニケーションは必要ない。
これははっきり言って非常に生産性が高い。
もちろんそれが業務の全てではないが、なるほどそういうことかと、とても納得したものである。
一方で、これはデメリットもある。
ハイコンテクストな日本人的な仕事は、それによって仕事を作り出すだけの提案力があるが、発注された仕事を効率よくこなすだけでは、仕事を作り出すことはできない。
あくまで顧客起点にしかなり得ず、思いもよらない機会を創出するということはあまり起こり得ない。
言い換えると、クライアント主導の仕事は手間がかからない反面、市場を大きくすることが難しく、下手をすると現在の市場規模も保てないということだ。
昨今、仕事の効率性という議論が多いが、ノンネイティヴ同士でも成り立つような、プレーンなコミュニケーションに基づくプレーンな仕事は、効率的である反面、市場規模を縮めてしまう可能性があるのではないか、ということも考えたりしている。
どんなことにも、良い面と悪い面があるのだろう。
まぁ、ご参考ということで。