人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「ザッポスの奇跡」 読了 〜組織は一日にしてならず〜

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組織論は常にウォッチしているのだが、先日読んだ本の中でも言及されていた、ザッポスの組織文化に興味があり、手に取る。

いわゆる「感動体験」を追及するEC事業者で、その体験を生み出すために社員に対して自主性と創意工夫を求める文化の会社、という程度の理解だったので、これを機会に一度読んでおこうと思った次第。

 

内容としては、日本人のコンサルタントが関係者にインタビューを重ねながら、ザッポスの独特の制度、文化、採用について紐解いていく、というもの。

非常に平易な文章、構成なので、スルスルっと入ってくる一冊。

 

スルスルっと入っては来るのだが、なるほどザッポスのような組織文化の実現はなかなか難易度が高そうだ。

まずもって、独特の企業文化が差別化であり、それが完全競争から距離を置く戦略である、という前提がある。

 

そしてそのためには、目指すカルチャーを体現できる人材を採用し続ける覚悟と仕掛けがあり、なんとはなれば、合わない人間はさっさと辞めてもらう割り切りよう。

確かに、合わない人間に我慢して働いてもらうくらいだったら、いっそ辞めてもらったほうが組織が上手く回るというのは、小生の経験上もよくわかる。

 

小生の尊敬する先輩の言葉を借りれば「採用・配属・教育・評価・報酬・退社」に一貫性を持たせるということであり、極めて重要なのだが、一朝一夕にはなし得ない。

本当に強い組織というのは、そういうことなのだなぁと得心するのだが、この辺りのことに特進できるのは、日本の企業人だとリクルートOBとかになっちゃうのかな、なんていうことも考えたり。

 

まぁ、ご参考ということで。

「知性を磨く」 読了 〜どうも含蓄がある〜

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知性を磨く~「スーパージェネラリスト」の時代~ (光文社新書)

知性を磨く~「スーパージェネラリスト」の時代~ (光文社新書)

  • 作者:田坂 広志
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/06/20
  • メディア: Kindle
 

 

著者は日本の有名シンクタンクの設立者で、大前研一氏よりは若い世代だが、日本のコンサルタントの草分けの一人と言っていいんじゃないかと思う。

実は小生が社会人デビューした際の新人研修で、外部講師として講話を拝聴した思い出深い方であり、今般Kindleの日替わりセールでレコメンドされ、思わずポチってしまった。

 

20年以上前の講話で今でも覚えているのが、「仕事の報酬は仕事」という言葉と「知性とは答えのない問題に取り組み続ける力」ということ。

本書はその「答えのない問題に取り組み続ける力」であるところの知性をいかに磨くかについて、著者の見解が述べられた本。

 

何か科学的な論証がされているわけではないのだが、著者の長年の経験からもたらされる言葉の数々は、(小生が若い頃に受けた薫陶というバイアスもあって)深い含蓄がある。

具体的に○○というアクションをとるというより、もはや態度の問題だと思うのだが、そういった態度、姿勢を持ち続けることがいかに重要であるか、思い知らされる。

 

小生にとっては「襟を正す」一冊。

まぁ、ご参考ということで。

 

「雑草はなぜそこに生えているのか」 読了 〜これは戦略論〜

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以前に当該著者の本を読み、非常に興味深かったことを記憶しており、セールのタイミングでポチっていた一冊。

「弱さからの戦略」というサブタイトルに惹かれつつ、積読在庫消化の一環として拝読。

 

雑草学の専門家である著者による、雑草とは何か、どのような生態なのか、対処するにはどうするのか等々、一般読者の知的好奇心をくすぐる内容が展開される。

書籍そのものは中高生をターゲットにしており、まだまだ学びを続ける学生に向けた興味を引く理系コンテンツである一方、雑草の生態から分かる戦略論、人生訓と言った趣もある。

 

冒頭に「ドラえもん」のありふれたシーンの引用から始まる。

母から言いつけられた草むしりをサボりたいがために、ドラえもんに草むしり機をねだる、のび太

 

ドラえもんは「そんなものは無い」と答えるのだが、それは22世紀において雑草は根絶されているから草むしり機のようなものは無いのか、22世紀になっても人類は雑草との戦いを続けているので無いのか。

そこには雑草と人間を巡る、深い深い関係性が潜んでいる。

 

あるいは、「世界にひとつだけの花」という歌の歌詞を引き合いに、「オンリーワン」でよいのか、やはり「ナンバーワン」を目指すべきなのか、という疑問に対して、生物界では答えが出ていると述べる。

曰く、同一環境化で棲み分けないとすると、ナンバーワンしか生き残らないのが生物界の常で、これだけ多様な生物種が存在するのは、実はそれぞれがうまく棲み分けており、すべての生物種がオンリーワンでナンバーワンなのだと。

 

雑草も、そういった棲み分けで生き延びている生物種の一つで、強いように見えるが実はとても弱い生き物とのこと。

植物の戦略の方向性としては、あくまで生態系の上位を目指す「強さ」を志向するものと、過酷な環境でも生き延びられるように変化していく志向(サボテンとか)と、変動する環境でも生き延びる志向と三つがあり、雑草は変動する環境で生き延びる選択をした植物なのだそうだ。

 

一つ一つの個体は弱いのだが、隙間を縫って生き延びるために、発芽のタイミングを同一環境でもずらすとか、タネを大量に作るとか、単一生殖を可能にするとか、土が掘り返されると発芽するとか、多種多様な戦術を選択しており、「雑草魂」「ど根性大根」などの単語で想起されるような強さは全くない。

といった感じで、語り出したら止まらないくらいトリビア満載の本書であるが、人生訓として読んでも、戦略論として読んでも、非常に興味深い一冊である。

 

まぁ、ご参考ということで。

「45年間トップセールス最強営業術」 読了 〜読んでいると営業したくなる〜

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45年間トップセールス「最強営業術」 誰でも今すぐ売れる一流営業の教科書

45年間トップセールス「最強営業術」 誰でも今すぐ売れる一流営業の教科書

  • 作者:府中 伸一郎
  • 出版社/メーカー: ごきげんビジネス出版
  • 発売日: 2019/04/22
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
 

 

 

若い頃、営業には苦手意識があって、自分なりに努力した過去があるため、この手の本はどうしても気になってしまう。

「よく言い切ったな」というタイトルも、「じゃあ読んでみようではないか」と思わせる。

 

著者は、自動車と保険のセールスの世界で最前線の営業として結果を出してきた人物のようだが、本書は、著者の想いが詰まった自費出版に近い本だと思う。

対人交渉中心の心理戦と、営業として愚直に努力し続ける心構え的な要素と、概ねそんな内容で、ボリュームもほどほど。

 

ほんの僅かな踏み込み、ほんの僅かな努力が大きな違いになると説く著者の主張は、営業経験者なら共感できるはずだ。

個人的には、ちょっと暫く最前線の営業から離れているので、こんな感じで久しぶりにガツガツ営業したいな、なんて思ってしまった。

 

「当たり前のことを馬鹿みたいにちゃんとやる」系の本なので、営業で苦労している人が読んだとして、どれほどプラスになるかはわからないが、営業職に従事している人の心の支えにはなる本じゃないかとは思った。

まぁ、ご参考ということで。

「Extreme Teams」 読了 〜企業文化も差別化の戦略〜

リンクを貼る。

 

新規事業開発も、結局は組織文化に依存すると考える小生において、企業文化やチームビルディング、リーダーシップは興味のあるテーマである。

いろいろ本を読んでいく中で、Amazonにレコメンドされ、レビューも高かったのでポチった一冊。

 

ホールフーズ、ピクサー、ザッポス、パタゴニア、ネットフリックスなど、独自の企業文化かつ好業績で有名な7つの企業の組織文化を、横断的にレビューした一冊。

著者はコンサルタントのようなので、アカデミックなアプローチというより、ケーススタディ的に学びを得ようとする本である。

 

面白いと感じたのは、紹介される各企業の文化というのが、全然似ていないところ。

社員に家族であることを求める企業もあれば、ドライに業績を追求する組織もある。

 

当たり前といえば当たり前なのだが、組織それぞれに理想像は存在するし、特定の組織文化のみに好業績がもたらされる、というものでもなさそうだ。

著者の主張によると、高い目標(業績目標とは限らず組織ビジョンということもある)と組織の良好な人間関係を両立させようとする営みが、卓越した組織を作る、ということのようだ。

 

目標だけでもダメだし、文化だけでもダメ。

いろんな企業を渡り歩き、クライアントとしてお付き合いしてきた小生の経験上もそんな実感がある。

 

強い会社というのは、明るい仲間意識がある一方、業績へのコミットメントが高いところが多かったと思う。

ありきたりな表現で申し訳ないのだが、健全にスポーツを楽しむかのように仕事をする。

 

そういった文化、雰囲気作りもまた、差別化戦略の一つであると思い知らされる。

まぁ、ご参考ということで。

他部署の悪口を言うな

人間というのは、すぐにセクショナリズムに陥るものだと思っている。

普段一緒に仕事をしている同部門の人間は仲良くなりやすく、理解もできるので、仲間意識を持ちやすい。

 

そうではない他部署については逆に、対立しやすい心理状況になる。

しかし、仲間意識も敵対心も、所詮バイアスに過ぎない(単純接触効果と言ってよい)。

 

そのバイアスが、あたかも客観的事実かのように思い込んでしまうと、その組織は、「チーム」としてのシナジーはおろか、足の引っ張り合いだけの、もはや組織をなす意味がない存在になっていく。

しかし、組織を「チーム」として機能させる一義的な責任は、各部門長にあるはず。

 

部門長は所属部門の利益代表ではあるものの、それ以前に、経営から委託を受けて組織機能の最大化を図る役割と理解している。

であるならば、現場の「バイアス」を拡大再生産するのではなく、「バイアス」を解きほぐし、組織全体が共通目的・共通目標の元にあることを認識させ、融和と理解を進めることこそ、取り組まなければならない。

 

これは理想論ではない。

社長の立場で考えれば、部門同士が対立している状況は「何を馬鹿なことを」となるはずだから、自明に近い論理だろう。

 

また、現場の御用聞きで済むのであれば、経験と見識があるはずの人間を、高い給料で管理職として雇う意味がない。

経済合理性からも確かなはず。

 

自戒の意味も含めて、あえて物申す。

もちろん、現場レベルの、「草の根」の融和と理解の精神が礎なんだけれどもね。

 

まぁ、ご参考ということで。