人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「雑草はなぜそこに生えているのか」 読了 〜これは戦略論〜

まずリンク。

 

以前に当該著者の本を読み、非常に興味深かったことを記憶しており、セールのタイミングでポチっていた一冊。

「弱さからの戦略」というサブタイトルに惹かれつつ、積読在庫消化の一環として拝読。

 

雑草学の専門家である著者による、雑草とは何か、どのような生態なのか、対処するにはどうするのか等々、一般読者の知的好奇心をくすぐる内容が展開される。

書籍そのものは中高生をターゲットにしており、まだまだ学びを続ける学生に向けた興味を引く理系コンテンツである一方、雑草の生態から分かる戦略論、人生訓と言った趣もある。

 

冒頭に「ドラえもん」のありふれたシーンの引用から始まる。

母から言いつけられた草むしりをサボりたいがために、ドラえもんに草むしり機をねだる、のび太

 

ドラえもんは「そんなものは無い」と答えるのだが、それは22世紀において雑草は根絶されているから草むしり機のようなものは無いのか、22世紀になっても人類は雑草との戦いを続けているので無いのか。

そこには雑草と人間を巡る、深い深い関係性が潜んでいる。

 

あるいは、「世界にひとつだけの花」という歌の歌詞を引き合いに、「オンリーワン」でよいのか、やはり「ナンバーワン」を目指すべきなのか、という疑問に対して、生物界では答えが出ていると述べる。

曰く、同一環境化で棲み分けないとすると、ナンバーワンしか生き残らないのが生物界の常で、これだけ多様な生物種が存在するのは、実はそれぞれがうまく棲み分けており、すべての生物種がオンリーワンでナンバーワンなのだと。

 

雑草も、そういった棲み分けで生き延びている生物種の一つで、強いように見えるが実はとても弱い生き物とのこと。

植物の戦略の方向性としては、あくまで生態系の上位を目指す「強さ」を志向するものと、過酷な環境でも生き延びられるように変化していく志向(サボテンとか)と、変動する環境でも生き延びる志向と三つがあり、雑草は変動する環境で生き延びる選択をした植物なのだそうだ。

 

一つ一つの個体は弱いのだが、隙間を縫って生き延びるために、発芽のタイミングを同一環境でもずらすとか、タネを大量に作るとか、単一生殖を可能にするとか、土が掘り返されると発芽するとか、多種多様な戦術を選択しており、「雑草魂」「ど根性大根」などの単語で想起されるような強さは全くない。

といった感じで、語り出したら止まらないくらいトリビア満載の本書であるが、人生訓として読んでも、戦略論として読んでも、非常に興味深い一冊である。

 

まぁ、ご参考ということで。