人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「宗教国家アメリカのふしぎな論理」 読了 〜アメリカウォッチャーは腹落ちするかも〜

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タイトルと概要に惹かれてそのままポチったというか…。

トランプ政権の誕生は、外から眺めていた人間としてとても謎だったし、そこに渦巻くポピュリズムの雰囲気も他人事ではない感じもあり…。

 

アメリカの政治や文化は、日本という国に住んでいれば否応無く身近なものだし、個人的にも興味があったりするのだが、彼の国の成り立ちを宗教的な背景から紐解いており、大変面白い本だと思った。

以前、「ゼア ウィル ビー ブラッド」という映画を観たことがあるのだが、

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BC%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%89

その中の主要キャストに「巡回宣教師」がおり、住民を異常な熱狂に巻き込むシーンがあって、「なんじゃこりゃ」だっだのだけれど、どうも彼の国で歴史のあるもののようである。

 

これは宗教の大衆化ではあるのだが、著者の言葉を借りれば「反知性主義」がアメリカの中では根強く、その体現でもあるようだ。

反知性主義」というのは、別に知性そのものを否定するのではなく、一部の知性が政治権力を独占するのを許さず、大衆こそ主役であるという考え方で、プロテスタントユートピア建設を夢見たところから始まるアメリカらしいスタンスだ。

 

その中で、トランプ支持のうねりも生じるのだが、なにせ本書で解説される「アメリカ化」したキリスト教の特徴については、このブログで書ききれないほど深いものである。

他山の石として、日本はどう考えるべきなのか、一応の示唆を踏まえて本書は終わるが、非常に興味深い一冊であった。

 

「結局なんでトランプは大統領になれたんだっけ?」が気になる人には是非。

まぁ、ご参考ということで。

「西洋美術史入門」 読了 〜美術を通じて人間の歴史を深く知る〜

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西洋美術史入門 (ちくまプリマー新書)

西洋美術史入門 (ちくまプリマー新書)

 

 

今年のビジネス書はアートがブームであった。

ということでもう一冊、読了。

 

大学の専攻を考える高校生に向けた西洋美術史の解説書という趣である。

その語り口や解説に、初学者に向けた真摯さが伝わってくる、とても好感の持てる文章、構成。

 

冒頭からなるほどと思わされるのが、歴史と連動して美術を研究する意味である。

教科書で見たことがあるような作品が流通していた時代というのは、人々の識字率が低く、美術作品は文字の代わりに、プロパガンダなり宗教的メッセージを伝えるメディアとしての役割を担っていた。

 

すなわち、作品には当時の歴史や文化、為政者や市民の民意が取り込まれており、芸術を紐解くことは、すなわち人間の歴史を理解することにつながると、本書では説く。

歴史や文化だけではなく、技法や画材にも言及がおよび、なるほど深いものである。

 

著者のスタンスに共感を覚えるのは、特に終章である「おわりに」のくだり。

もともと美術はメディアとしての役割があったのだから、現在の日本の美術館での扱いのように、ガラスの向こうに鎮座し、静粛して鑑賞するようなものでは無かったのではないかと投げかける。

 

むしろ、メディアとしての役割を終えた今こそ、その歴史的背景や人間の心理について、侃侃諤諤の議論をする材料としての役割を与えられたのではないか。

欧米の美術館では、一つの作品の前に教師と学生が車座になり、作品から読み取れる意味を議論していたりするそうである。

 

小生としても、黙って鑑賞する今の美術館も良いが、皆で議論する場としての美術館を、是非望みたい。

そこにこそ、新たな学びと、学ぶことか真の喜びがあるのではと、期待するからである。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

 

 

「たたかう植物」 読了 〜まさに仁義なしだが面白い〜

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たたかう植物: 仁義なき生存戦略 (ちくま新書)

たたかう植物: 仁義なき生存戦略 (ちくま新書)

 

 

レコメンドで表示され、尚且つレビューも高評価なので思わずポチった一冊。

植物が如何にして外敵と戦う進化を遂げ、生き延びてきたかを、「植物VS環境」「植物VS昆虫」「植物VS動物」という章立てで紐解いていく。

 

ご明察な皆さんには、お分かりの通り、当然最終章は「植物VS人間」である。

この勝負、植物の勝ちなのか人間の勝ちなのか、なかなか奥深い解説なので、興味のある向きは是非ご一読を。

 

雑草が植物との競争では弱者であり、過酷な環境に適応することで生き延びたとか、実は刈れば刈るほどよく生えるとか、植物の赤い実が識別できるのは霊長類だけとか、森では蟻を味方につけるのが一番強いとか、なんかもう「へー!」の連続である。

誰のために書かれた本かと問われれば、一般教養を求める層、ということになるのだと思うのだが、なかなかどうして、植物の戦略は経営戦略論も彷彿とさせる奥行きがある。

 

普段ビジネス書で、そういった本ばかり読んでいる向きにも、新たな気づきがあるかもしれない。

もう一つ、なるほどなぁと考えさせられたのは、(競争)環境変化への対応のスピードについて。

 

生物の進化においては、一代で変化する環境に適合するということはない。

多様な子孫を生み出しながら、適者生存という形で適合していく。

 

そうなると、世代交代が早い種が有利で、昆虫や一年草など、個体寿命が短く大量発生するものが、生き延びられる可能性が高いのである。

これ、今の企業経営環境を見る上では、示唆に富む話ではなかろうか。

 

どうしても「延命」や「その世代内での変化」に拘りがちだが、「世代交代」「大量発生」を早いサイクルで展開することが、自然の摂理なのではあるまいか。

その上で、「生き残ったものが適者」という割り切り。

 

さて、どう消化すべきか。

まぁ、ご参考ということで。

「フリーズする脳」 読了 〜現代人必読の書〜

まずリンク。

フリーズする脳 思考が止まる、言葉に詰まる (生活人新書)

フリーズする脳 思考が止まる、言葉に詰まる (生活人新書)

 

 

Kindleのセールでたまたま目にし、高い評価のレビューを眺めている中で、「発達障害の人にも起こりうるパターンなのでは」という記載を目にする。

発達障害は個人的に身近な問題でもあり、興味を持って購入した次第。

 

著者の語る「フリーズする脳」というのは、現代生活のパターン化された環境下に長く置かれることで、複雑な思考(分析、判断、系列化)ができなくなっている状態を言い、痴呆とかアルツハイマーとかではない。

無重力状態が長過ぎて筋力が衰えてしまったようなものなので、そういう環境下であれば、年齢に関わらずフリーズしてしまうようである。

 

いくつか症例が紹介されるのであるが、毎日決まった顧客と決まった仕事をし、外界からの刺激もなく会社と家の往復をし続ける生活の果てに、複数の登場人物でなされる会話についていけなくなる若者のエピソードなどは、なかなかに衝撃的である。

他の症例で語られるのだが、フリーズした状態というのは、脳機能と身体の連動性が失われていくものらしく、極端に視線移動と会話中の身振りが少なくなってしまうようである。

 

厄介なのは、そういう環境下に入ると症状が加速してしまうこと。

年齢によってはそのまま痴呆へ、となってしまうのがまた恐ろしい。

 

もう一つ厄介だなと感じたのは、フリーズの症状というのは、アルツハイマーのようでもあるが、鬱の症状のようでもあり、冒頭述べたレビューの通り発達障害のようでもあることだ。

特定環境下に長く置かれたことによる思考の衰え(=フリーズ)なのに、何かおかしいと思って鬱や発達障害の診断を受けたら陽性(?)と判断されてしまうことがあるのではないだろうか。

 

しかしこれ、環境を変えれば時間はかかるが治ることが出来るようだ。

パソコンやスマホ頼みにならず、新しいことに挑戦し、自然や芸術に親しみ、人と深いつながりを持つ、ということで良く、要は人間らしい生活を送れということなのだが、その環境を取り戻すことで、複雑な思考力は取り戻せる。

 

昨日の本は狩猟採集生活だったが、いやはや、現代というのはここまで「非人間的」ということか。

例え自覚症状は無くても、現代に生きる人みんなに一読を勧めたい。

 

ちなみに本書の初版は10年以上前だが、適宜加筆されているようなので、古さを感じることはない。

まぁ、ご参考ということで。

「最高の体調」 読了 〜健康管理の新しいアプローチ〜

まずはリンクを貼る。

最高の体調 ~進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法~ (ACTIVE HEALTH 001)
 

 

筆者の本は以前にも読んだことがあり、新作が高評価でリリースされていたので、手にとった次第。

一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書 (SPA!BOOKS)

一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書 (SPA!BOOKS)

 

 

著者のコンセプトは、人類の発達史からすれば、農耕に由来する穀物中心の食生活の歴史は浅く、さらに加工食品中心の現代的な食生活はもっと浅く、狩猟採集民族としての(食)生活を取り戻すことが、ダイエットや体調管理には重要であるというもの。

コレ自体は著者のオリジナルでは無く、色々な専門家が研究している内容である。

 

本書は、解決すべき現代病(=文明病)のターゲットを、「炎症」と「不安」と置き、それらを解決する方法論を、数多くの論文/研究成果を援用し、わかりやすく説いたもの。

ものすごく要約してしまうと、

・昔ながらの食生活に親しみ(炎症)

・自然の中で適度な運動をし(炎症&不安)

・自分の中で軸となる価値観を定め(不安)

・細かな目標をクリアすることで達成感を得る(不安)

といったところだろうか。

 

特定の学問によらず、健康に関する数多い知見をメタ化し、ある意味心身合一なコンセプトとして、狩猟採集民族化したとでも言えようか、なかなかの新しいアプローチである。

ちなみに、色々な論文等が参照されるが、どうも幸福という点に関して言うと「誰かの役に立つ」というものが一番強力なようである。

 

「さぁ、やってみよう」とはなかなか行かないかもしれないが、とりあえずメールとSNSのチェックは時間を決めて、手書きで日々の目標管理なんかはやっても良いのかもしれない。

ちょいと面倒だけども。

 

「炎症」と「不安」という単語が気になった方は、ぜひ一度チェックしてみると良いと思う。

まぁ、ご参考ということで。

 

 

 

 

撤退もスムーズに出来ないものか

今日はこんな記事を目にして。

www.landerblue.co.jp

 

信じられないような(という表現すら傍観者の様で引っかかるが)低賃金労働や人権蹂躙の実態が明らかになりつつある技能実習制度であるが、その裏側には色々な背景が存在し、低賃金でなければ成り立たないビジネスが需要を支えていることもその一つ。

日本人が逃げ出してしまい、本来であればその時点で破綻するはずだったのに、このような形で延命してしまうという悲劇。

 

以前レビューを書いたが、こちらの本にも近い話が出ていた。

dai19761110.hatenablog.com

 

日本は雇用の流動性が低いため、低賃金でも会社から人が流出せず、事業が成立してしまい、法人が潰れない。

そのために法人数が突出して多く、人件費も低いが付加価値も低い中小/零細企業がその中の大多数を占め、生産性が上がらないのである。

 

いち社会人として、技能実習生問題も含め、なんとかならんものかと思うのだが、「付加価値の低い中小/零細企業は市場から撤退すべきだ」みたいな極論しか考えつかないし、個人として取れるアクションとしては「中小企業ではたらく人は、より大きな会社に転職しましょう」になるんだろうけれど、果たしてそう断言して良いものやら。

ちなみにまだ読んでないのだが、山口周氏の最新刊は、エンプロイアビリティを高めて拒否権を持つべし、というようなことを説いているらしい(今度読む)。

 

そんな、みんなが自分のことだけ考える社会の方向で良いんでしたっけ、と思わなくもないのだが、確かに日本の社会は、「働かなくても(付加価値を産まなくても)給料がもらえる」「付加価値を生み出せないのに潰れない」という、人と企業の存在を許しすぎたのかもしれない。

クビになったり会社が潰れたり、市場からの撤退は結構な悲劇なのだが、そこから立ち上がる物語もあるし、なんとかスムーズに新陳代謝が起きる社会に出来ないものかなと、考え込んでしまう次第。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

 

「NASAより宇宙に近い町工場」 読了 〜世界初は世界一〜

リンクを貼る。

 

小生は、本書の著者がTED でプレゼンするのを見るのが好きだ。

tedxsapporo.com

 

もちろんブログもチェックしている。

ameblo.jp

 

いずれも勇気が出るので、是非ご一読あれ。

本書は、そんな筆者の生い立ちから、現在の取り組みを紹介しつつ、社会から「どうせ無理」という「レッテル貼り」を撲滅したい、という熱いメッセージが込められた一冊である。

 

自動車修理工の父親に育てられた著者は、幼い頃から自力自作を叩き込まれ、なんでも自分で作ることを習慣化していく。

小学校高学年くらいから、航空機開発への夢を持ち、ペーパークラフトはじめ、自作に熱中する。

 

オタク気質ゆえ、好きなこと以外は学校の勉強含め、非常に苦手だったため、学校の先生に航空機開発の夢を、「どうせ無理」と強く否定されてしまう。

しかし植松少年は全く諦めることなく、大学卒業後サラリーマンとして航空機開発へ関わることができるようになるのだ。

 

しかし、本当にものづくりが好きで、航空機が大好きな植松青年は、ものづくりも航空機もそれほど好きではない「サラリーマン」に囲まれた生活に(たぶん)馴染めず、故郷の北海道で家業を継ぐことになる。

継いだ当時は父と二人きりから出発し、無謀と言われながらもロケットの開発にチャレンジする。

 

それは、幼い頃に言われた「どうせ無理」という言葉が、いかに人の可能性を損なう残酷なものであるかを訴え、その言葉に反証し、社会から撲滅するためのチャレンジである。

チャレンジだから、もちろん失敗する。

 

特に宇宙開発は未踏領域だから、前例もなく、手作りで試行錯誤をすることしかない。

しかし、だからこそ成長するのであり、そこで生まれた世界初は、世界一となり、NASAとも対等に渡り合えるようになるのだ。

 

本書で説いていることは、実は下記のリンクとも同じで、試行錯誤から真の行動と学びが得られるというのが世界最先端の教育でもある。

www.businessinsider.jp

 

小生の関わる新規事業も、「初めて」「試行錯誤」の連続なのだが、だからこそ人を成長させるし、だからこそ競争優位が作れるとも考えている。

そんな話は蛇足でしかないが、著者の情熱と強い思いには、社会人として、子を持つ親であれば尚更、触れていただきたいと考えている。

 

プレゼンでもブログでも本書でも、是非味わって欲しい。

まぁ、ご参考ということで。