人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「天職は寝て待て」 読了

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天職は寝て待て?新しい転職・就活・キャリア論? (光文社新書)

天職は寝て待て?新しい転職・就活・キャリア論? (光文社新書)

 

 

いやー、Kindle Unlimitedありがとう、という感じである。

とりあえず山口周氏の著作を乱読している。

 

本書は、ご自身の経験や、組織人事コンサルティングの職務経験を踏まえ、山口氏なりの転職についての考え方を示した本。

人材紹介業に十数年、自分でも何回も転職した人間としては、総じて賛成の内容である。

 

転職関連の書籍は、賛成本・反対本・テクニック本なんていう感じに大別できるのかもしれないが、その何れとも微妙に差別化がなされている(さすがコンサルタント)。

基本線は、クランボルツの「プランドハプンスタンス 」である。

dai19761110.hatenablog.com

 

広くアンテナを保ちながら、前向きに新しい機会にチャレンジしてみる、というものである。

そのためには、結局は「良き職業人」として真面目に仕事をせよ、ということになるのだが。

 

ちなみにタイトルの「天職は寝て待て」というのも、予め自分の適職を計画したり、好きなことを探すのは無理があり、適職は日々の地道な取り組みの先に、天啓のように得られるのではないか、という考察に基づく。

その他、転職のメリット・デメリット、考え方等は、山口節とでも言うべき幅広い知識、古典等の援用から構成され、それだけでも十分面白い(著作を数冊も読み続けていると、流石にネタかぶりがでてくるが)。

 

個人的に面白かったのは、やはり山口氏個人の転職経験にまつわる部分で、広告代理店と戦略コンサルの「ネイチャーの違い」に苦労した話などは、なるほどなと思わされた。

広告代理店の方も、戦略コンサルの方も、ご自身のネイチャーを知るために、ぜひご一読されると良いと思う。

 

その他にも、

・普通の人が語る志望動機は、ただの憧れ

・転職で得るものだけでなく、失うものも考えよ

・外形的な仕事の類似性に惑わされない

 等々が心に残った。

 

「今すぐ転職したい」という人が、読んですぐに役立つ本ではないが、漠然と「この先どうしようかなぁ」と考える人には、ちょうどよい一冊ではないか。

まぁ、ご参考ということで。

 

 

「総合スーパーの興亡」 読了

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総合スーパーの興亡

総合スーパーの興亡

 

 

何を隠そう小生は三品先生のファンである。

何冊読んだかわからないが、紙の本から遠ざかっていたこともあり、暫し積読になっていた一冊。

 

こういう積読の本というのは面白いもので、興味があるから買ったものの、その時は読まずにいて、引っ張り出して読んだそのタイミングがベストだったりする。

昨日の「絶賛試行錯誤中」というエントリーに対する一つの解にもなっていたりして(詳細は現在自分の中で煮詰めている)。

dai19761110.hatenablog.com

 

本書は、時系列的には前著となる「経営戦略を問い直す」(これも穴が開くほど読んだ)の続編的存在にあたり、事業を営む以上絶対に避けられない、本業の衰退からの脱出(「転地」と三品先生は呼ぶ)を、いかに成し遂げるかを、総合スーパー三社の興亡史という形で解き明かしていく。

経営戦略を問いなおす (ちくま新書)

経営戦略を問いなおす (ちくま新書)

 

 本書にはもう一つの狙いがある。

 

本書全体の監修は三品先生によるものだが、執筆やその前提となる取材は、神戸大学三品ゼミのゼミ生が行っている。

当時批判的に語られることの多かった「ゆとり世代」に対して、三品先生は光明を見出しており、「ゆとり世代」のゼミ生に執筆を担当させることで、彼らのポテンシャルを世に知らしめよう、ということである。

 

それで、実際の本書の構成自体は、総合スーパーの興亡の明暗を分けたものは何か、直接的にはダイエーはなぜ潰れ、イオンとイトーヨーカドーは生き残ったのか、という問いの答えを、現場、本社(組織)、経営者という切り口で探っていく。

三品先生の著作に親しんだ方なら答えは明白で、それは経営者なのである。

 

現場の努力は、事業立地の衰退にあらがうことはできない。

経営者によって命運が決するといっても、ダイエーの中内さんが無能で、イオンの岡田さんやイトーヨーカドーの伊藤さん・鈴木さんが有能だったということでもない。

 

各経営者は、勿論みな超絶的に有能なのだけれど、「事業観(世界観と言ってもいい)」の違いが、経営の構えと組織の行く末を決めてしまったということなのだ。

中内さんが「安売り」と「拡大」だとすれば、岡田さんは「適応力」「アメリカへのあこがれ」「協調」という「事業観」だったように、それぞれの事業観は成長の要因にもなるし、衰退の原因にもなりうる。

 

個人的に考えさせられるのは、やはりイトーヨーカドーの事例である。

いま、様々な企業で新規事業が求められているが、本業の衰退を懸念したその動きは、はっきり言って、「面白くて新しいアイデアも否定はしないが、本当に欲しいのはイトーヨーカドーにおけるセブンイレブンであり、その立役者であり次世代経営者の鈴木敏文氏」なのだと感じている。

 

多くの人がご承知の通り、鈴木氏は鈴木氏で、厳格な「事業観」を持つ人で、それをベースに30代からセブンイレブンの事業を立ち上げ、10年以上かけてグループの屋台骨に成長させている。

多くの企業で求められているのは、結局のところ「事業観」を持つ若手の優秀な社員に、職業人生をかけて新規事業に取り組ませ、その実績を持って本体の経営に返り咲くストーリーなのだと思う。

 

ここ数年のトレンドであり、小生もそのように取り組んできたけれど、「リーンスタートアップ」的な考え方とはまた違う、重厚で厳しい要求こそが、今の日本企業に必要なのではないかと投げかけられているように感じた。

本書の末尾で、再び三品先生は「ゆとり世代」に言及している。

 

本業が衰退していく中で、今後30年以上働く若者に対して、その旧世代とは違った良さを生かしながら、新しい事業を再発明させることこそ、これからの日本企業に求められるスタンスなのではないかと投げかけている。

小生も、ある会社で、新卒一年目の社員が堂々たる新規事業提案のプレゼンをしている姿を見て、我々は結局、時間をかけて彼らを役立たずにしてはいないか、という不安を感じたことがある。

 

今の若者のポテンシャル、そして鈴木敏文氏が30代から時間をかけてセブンイレブンを成長させた事実を踏まえると、我々の世代の役割は、自ずと明らかなのではないだろうか。

尚、本書は我々生活者にとって身近なビジネスを題材としていることもあり、冒頭から「へー!!」の連続である(店舗の業績を決定する要因はなにか?等々。たぶん皆さんが考えている要因と全く違うはずである)。

 

そして、同じように見えていた総合スーパーが、経営者の「事業観」の違いからくる、戦略・戦術・戦闘の違いが明らかにされていく様は、非常に興味深いものである。

本年通じて決して忘れられない一冊となった。

 

是非多くの方にご一読いただきたい。

まぁ、ご参考ということで。

 

 

 

 

 

絶賛試行錯誤中

新規事業開発に関わる仕事に取り組んではや数年。

本ブログも転職ネタから、徐々に新規事業ネタに移行してきたが(最近は圧倒的に読書ネタだが、新規事業の情報源としての”仕入れ”が主な目的だったりする)、新規事業を求める企業の声も、日に日に強くなっている。

 

日本の会社は本当に新規事業が好きだ。

多分、日本に長寿企業が多いのも、時代の変化に沿って、新しい事業を作り続けて来たからだと理解している。

 

アメリカの企業は「選択と集中」が好きで、新しい機会は新しい会社がやればよく、その果実は投資家のポートフォリオで享受され、古くなった企業は割と良く潰れる。

president.jp

この割り切りは、日本ではあんまり無い。

 

そんなこんなで、いろいろな企業と、いろいろな取り組みをさせていただいているのだが、小生の頭の中はいつも、「どうやって新規事業をやったことがある人を増やすか?」「どうやったら新規事業がどんどん生まれる組織になるのか?」で一杯である。

それで、やればやるほど思うのは、新規事業立ち上げの意思決定は非合理だということだ。

 

そこで思わず考えてしまう最初の疑念は、コーポレート・ガバナンスが効いた組織で、その非合理な意思決定ができるのか?ということ。

そして続く疑念は、新規事業は立ち上がってからの方が大変なのだが、苦しい中でさらなる投資をどうやったら決断できるのか?ということ。

 

さらにもう一つ、自分が取り組んでいることを否定しかねない疑念なのだが、事業環境が日々高度化、複雑化する中で、いち社員からの提案(ボトムアップ)で、果たして確かな事業が生まれるのか、というものである。

生まれることは生まれるのだが、イノベーションの主軸に置けるほどの質や量があるのかは、未だに答えはない。

 

明確に答えを持っておらず、故に絶賛試行錯誤中で、クライアントには申し訳ない限りなのだが、現実的には、「もはや実践あるのみ」なので、何らかの解を見出して行きたいと考えている。

実際、これまでも、試行錯誤の中からしか見えてこなかったのだし。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

終わらない仕事はない

社会人を20年もやっていると、結構ヤバい場面を通過してきている(思い出すと怖いので、詳細は振り返らないことにする)。

トラブル的にヤバい事もあったと思うし、業務量的にヤバい事もあった。

 

そして今も時々ヤバくなる。

流石にトラブル的なのは、この歳ではあんまりないし、個人芸で生きている感じなので「巻き込まれ事故」みたいなのも無いが、業務量的にヤバい事はある。

 

しかし、どんなにヤバくても、今までなんとか生き延びてきたし、死ぬようなことはなかったので、なんとかなると自分に言い聞かせている(苦笑)。

そう、終わらない仕事はないのだ。

 

粛々と取り組んでいれば、いつか終わり、また何事もなかったかのような日常に戻っていくはず。

はい、というわけで仕事に戻ります(笑)。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

 

 

なぜ、毎日の「素振り」が必要なのか?

素振りは基本の練習だから大事だ、という人もいる。

大事な練習だから基本というのだよ、という人もいるのだけれど。

 

武道を軸に人生を切り開いている立場からすると、大事な理由は二つあると思っている。

一つは、人間はロボットではないので、一度身につけた技術は常にトレーニングしておかないと、出来なくなってしまうから。

 

もう一つは、身につけた技術は、実戦(実践)の中で“崩される”ので、正しい型に戻しておく必要があるから。

野球のバッティングを例にしよう。

 

小生は野球はやらないけど、バッティングフォームのトレーニング自体は、正確に、速く、強く、なおかつコントローラブルにバットを振る技術を習得するものだと思う。

日々の素振りや、それ以外の練習も、その技術を追求するために存在するはずだ。

 

正確なフォームを作るトレーニングは、基本的に同じフォームを丁寧に積み重ねていくしかない。

しかし、いざ実戦になると、ピッチャーはバッターに打たせないような球をひたすら投げてくる。

 

レーニングでは有り得ない球筋、リズム、その他、素人ではわからない「ありとあらゆる手」を使って、トレーニングとは違う攻め方をしてくる。

バッターは、そのトレーニングと明らかに違う状況に、培った技術を用いて、柔軟に対応させていくことになる。

 

正確なフォームがあるからこそ、変化のある相手の攻撃に対応することができるのだけれど、変化のある状況ばかりに対応しすぎてしまうと、正確なフォームが崩れて、どんどん打てなくなってしまうのだと思う(実戦に出るということは、練習と同じことをしない状況に身を置くことでもある)。

これが、正しい型に戻しておく必要がある、ということである。

 

これはなにも、スポーツや武道に限る話ではない。

ビジネスの場面というのは、常に実戦であり、イレギュラーの連続である。

 

それが当たり前になりすぎてしまうと、本筋・王道や「べき論」がないがしろになってしまい、方向を間違えたり、非効率な進め方になってしまう。

日本人の社会人教育が弱いといわれて久しいが、学問の場というのは、未踏領域に挑むような

「その幸運は偶然ではないんです!」 読了

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その幸運は偶然ではないんです!

その幸運は偶然ではないんです!

 

 

クライアントのワークショップを設計していて、裏テーマが「個人のキャリア形成」だったりするので、名著を引っ張り出して読んだ次第。

キャリア論では結構有名な一冊で、「プランドハプンスタンス=計画された偶発性理論」というのを提唱された本である。

 

人間何が向いているかわからないし、何が起きるかもわからないのに、あらかじめ決めたキャリアに猪突猛進するなんてナンセンスだろう、それよりもアンテナを高く持って、偶然の出会いに乗っかっていった方がきっと面白いぜ、というのが大筋(ちょっと表現が雑だけど)。

ちゃんとした解説はこちら。

allabout.co.jp

 

本書では、45人のケースを引き合いに解説しながら、新たな一歩に踏み出すためのQ&Aコーナーのようなものが挿入される形で展開して行く。

比較的読みやすく、なるほどねと思わされる。

 

一方で、難しいなと思うのが、帰納的にケースを積み上げられても、個々人の一度きりの人生全てに普遍的な法則なのかと言われると、それは残念ながら誰も保証できないわけだ。

とはいえ、メッセージは強力で、

・失敗しなければ成長はできない→新しいことにチャレンジすることを恐れていては成長はない

・どんな幸運に繋がるかわからないので、行動を起こせ

・何に繋がるかわからないから、興味を持った分野は学び続けろ

といったあたりは、小生も大事にしようと思った。

 

とはいえ、「偉そうなこと言ってるけど、お前の人生そのものがプランドハプンスタンスではないか?!」と突っ込まれそうな小生である。

まぁ、ご参考ということで。

 

「脳は、なぜあなたをだますのか」 読了

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これはまぁ、個人的には大好物のジャンルだったりする。

著者の専門は認知心理学で、人間の知覚が心にどのような影響を与えるか、というのを研究している。

 

本書では、その研究成果の一端が披露されていて、それだけでも「へーっ!!」の連続」。

人間には本当に意思があるのか、なぜ「オレオレ詐偽」に騙されるのか、自分の写真写りがイマイチなのはなぜなのか、といった素人の興味を引きつけてやまないテーマが連続する。

 

一方で、著者のもう一つのメッセージは、心理実験の作り込みの面白さと奥深さ、だったりもする。

本書をお読みいただければわかる通り、人間の心理というのはきわめてあやふやなもの。

 

そこに、「結論ありき」の実験を設計してしまうと、明らかに誤った答えを導いてしまいかねないので、如何に客観的なフィードバックを得られるようにするか、という高度な実験設計センスが求められるのである。

これは小生の仕事である新規事業開発でも共感できる話で、インタビューやアンケートで、如何にフラットな、「生」の声を拾えるかが、新規事業開発のキモだったりする。

 

コンパクトな一冊であり、驚きの連続でもある本書は、是非多くの人に読んでもらいたいと感じる次第。

まぁ、ご参考ということで。さ