人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

合気道の多人数掛けをスパーリング代替とする仮説(道場生向けメッセージ)

ブラジリアン柔術を2年弱取り組んでみて感じたのは、練習の中でのスパーリングは「認知・判断・実行」のサイクルを向上させるためのものではないか、ということです(試合はルール内での勝ち負けですが)。

「認知・判断・実行」というのは、サッカーの育成年代で掲げられるコンセプトで、育成年代が向上させるべきスキルとして、世界的なスタンダードとして提唱されているものです。

 

翻って、合気道における「認知・判断・実行」を鍛えるトレーニングは何かと考えると、それは多人数掛けでの自由技なのではないかと私は考えました。

例えば3対1で臨む際、「誰を倒しに行くのか(認知)」「どのような技を掛けるのか(判断)」で、実際にやってみる(実行)というサイクルを、短時間で高速回転させなければなりません。

 

そして多人数掛けの動きの中では、実戦で通用するような運足(中国拳法で言うところの歩法のような)、技の間合いのコントロール、相手に入っていく入身のアプローチやポジショニング、追い込まれた状況での技の実践などが学べると考えます。

一方で、1対1では何故いけないと考えるかと申しますと、「認知・判断・実行」の速度が遅いということが、まず挙げられます。

 

ブラジリアン柔術のスパーリングで求められる「認知・判断・実行」のスピード感は、個人的な体感としては多人数掛けの自由技を3対1で行うくらいのイメージに近いです。

もちろん、私の合気道ブラジリアン柔術の習熟度が違うので、そのイメージは不確かなものではありますが、現在の感覚としてはそのように感じるのです。

 

また1対1では、前掲の実戦的な運足、ポジショニング、追い込まれた状況での技の実践が学びにくく、そんなわけで「技を創る/磨くのは1対1」「実戦練習としては3対1」という仮説に至った次第です。

現在のジャストアイデアとして、3対1多人数掛け自由技の練習方法として以下のプロセスが考えうると思っています。

①決まった取り手(両手取り等)での多人数掛け

②複数の取り手(両手取りと正面打ち等)での多人数掛け

③技を掛ける側が仕掛けていく(正面打ちを打ちに行く、手を取りに行く)要素を加えた多人数掛け

 

これらの段階を踏んでいくことで、レベルを上げることができるのではないかと思っています。

ただし、多人数掛けといえども約束稽古であることに変わりはなく、本気で抵抗してくる相手、本気で攻撃してくる相手、もしくは何をしてくるかわからない相手に対して、どうやって技を掛けるのか、という要素は抜けています。

 

この点に関しては、この一年試行錯誤した要素もありますが、

①型稽古の中でしっかり当身を入れること

②中嶋先生から教えていただいている裏技の類をしっかり稽古しておくこと

③ダブルアタックや返し技、こちらから仕掛ける技の練習をしておくこと

④押してくる時、引いてくる時などの技の使い分けを練習すること(ブラジリアン柔術における「アクション・リアクション」の概念)

を、1対1の稽古の中で実施していくことになると思っています。

 

なお試合形式の練習を模索する方向性については、下記理由で棚上げとしたいと考えています。

①開祖のレベルは別として、本気で抵抗してくる相手に当身・裏技無しに技を掛けることは現実的には難しく、かといって当身・裏技ありにしてしまえば現実的・継続可能な練習にならないこと

※当身・裏技無しに掛かる技を目指すべきだとは思っています

②試合を構成すると結局は実戦とかけ離れた、試合で勝つための練習になること

③上記①②の併せ技で、掛からない技をひたすら掛け合う展開になりうること

※今の柔道がそれに近いと思っています

 

ということで、合気道を学ぶ我々が、より実戦でのレベルを上げるために取り組むべき練習の仮説として、多人数掛けの自由技があるのでは、というお話をさせていただきました。

我々が伝承している多人数掛けの教えは極めて限定的(自分から動く、止まらない)ですが、今後の稽古を通じて、新たな知見が得られればと考えています。

 

改めて考えてみると、多人数掛けに臨む際の苦手意識(そこはかとない難しさ、ちょっとした恐怖感など)こそ、我々が取り組むべき練習である証なのかもしれません。

引き続きの稽古・ご協力をお願いします。