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二十代から三十代の前半頃に、最も読んだ作家といえば、沢木耕太郎だったと思う。
沢木耕太郎はスポーツノンフィクションでも有名だったが、そんな作家をたくさん読んでいた以上、当然のように山際淳司の存在は認識していた。
才能を認められながら、四十代の若さで亡くなってしまうという、スポーツ選手を彷彿とさせる散り際は、彼を特別な存在にしているのではないだろうか。
そんな特別感と、近い分野で同じく認められている沢木耕太郎に入れ込んでいる流れから、かえって読む機会がないまま、今になってしまった。
代表作である「江夏の21球」「スローカーブをもう一球」を含む、野球をテーマにしたノンフィクション短編集である。
第一印象としては、沢木耕太郎が文学的と言ってよいのだとすれば、山際淳司はスポーツ報道的な気がした。
主人公となる一人一人の心理や生い立ちを紐解きながら、勝負となる試合の「その瞬間」を切り取りにいく感じがしていて、「ピーク感」のある面白さ。
そこに人生の機微を感じ、共感できる普遍のストーリーがある。
人がスポーツに魅了されてやまないのは、そういったストーリーを感じるからだと思うのだが、山際淳司の描き出す物語は、その体験を盤石なものにしてくれる。
一方で思う。
スポーツに人生の機微を感じる気持ちはわかるが、その娯楽に浸るほど老いては居たくないと。
昔ほど若くはないが、今だからこそ出来る戦いがあり、現役として充分通用するはずなのだから、勝負の世界を娯楽として消化するにはまだ早い。
山際淳司は素敵な物語だが、楽しむのはもう少し後で良いと。
まぁ、ご参考ということで。
※敬称略