人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

同じ風呂に入る

小生が転職エージェント駆け出しの頃、当時働いていた会社の社長から教わったことの一つが、「同じ風呂に入れ」ということだった。

転職希望者は、何らか現状に対して不満を抱えていて、それを例えて風呂に入っている人であるならば、自分が浸かっている風呂を、「熱い熱い」と言ったり、「ぬるいぬるい」と言ったりしている状態、ということだ。
 
その社長が言いたかったことは、その「熱い熱い」「ぬるいぬるい」と言っている人たちに対して、風呂の外から眺めて「いや、熱くない」「ぬるくない」という「論評」をするな、ということであった。
同じ40度の風呂でも、夏に入るのと冬に入るのでは感覚が違うし、普段42度の風呂に入っている人と38度の風呂に入っている人でも、それは全然違うはずだ。
 
故にエージェントというのは、その人と一度は同じ風呂に入り、その上で40度の風呂を熱いというのか、ぬるいというのか、自らの言葉で語れ、というのが「同じ風呂に入れ」という教えである。
それ無くして、顧客の真の望み、痛み、ニーズを理解することはできない。
 
新規事業開発の場面でも、ビジネススクールでは「カスタマーズペイン」と教えているようだが、机上で「痛み」を議論しても意味がなくて、本質は同じ風呂に入り、同じように痛みを感じられるかが勝負だと思う。
「同じ風呂に入る」、日本人にしか通用しないと思うが、ビジネスの場面でも、広く人間関係全般でも、役に立つ考え方だと思っていて、小生は10年近く、ずっと大事にしている感覚だ。
 
まぁ、ご参考ということで。