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「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム (NextPublishing)
- 作者: 藤岡淳一
- 出版社/メーカー: インプレスR&D
- 発売日: 2017/11/24
- メディア: Kindle版
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深センには残念ながら未だ行ったことがないのだが、凄いという噂は色々と聞いていて、興味を持っていた。
実際に20年近く現地で関わってきた著者の経験に基づく本ということで、早速読んでみた次第。
著者は現在も彼の地で製品製造のアレンジを行う仕事をしているのだが、台湾、深センと場所を移しながら、製造委託、現地製造、製造アレンジと徐々に領域をシフトしてきた経緯の振り返りと、現地の変化をまさに経験者として語っている。
本書の最後は、日本の製造業に対する提言という形で締めているのだが、20年間あのマーケットで戦ってきた人物の語る言葉は強く、説得力がある。
深センが凄いと感じたことは、製造の様々なプロセスが完全に分断され、それぞれのプロセスを担う中小企業が膨大に存在し、ダイナミックに連携しながら最終製品を形にしていくという構造である。
その構造によって、日本のそれと比べて、納期3分の2、コスト半分、最低ロット10分の1、ただし品質にバラつきあり、という価値を実現している。
現地の人件費はもはや安くはないと言われるが、日本でも大企業の下請けの中小企業が色々と「飲み込んで」来たように、「飲み込む」勢いの中小企業がうじゃうじゃ存在して、こういったプロセスが成立しているのではないかと思う。
「こんなものが作りたい」と思ったら、それに必要な部品、基盤、ソフトウェアなどを列記したブックレットがあり、そのパーツパーツを担う企業が山程あるので、すぐに開発ができる。
また、ロゴを貼るだけという製品もあるので、もはやメーカーなのか商社なのかよくわからない商取引だって可能。
Amazonで見かける、同じ画像で商標が違うだけのデジタルデバイスは、多分これなのだろう。
このあたりのダイナミックなエコシステムは、今から日本が真似しようとしても、勝つのは難しいと率直に感じた。
とはいえ、こういうのはデジタルデバイスだから成り立つ部分もあって、アナログな要素があったり、プロセスが長い製品に関しては、中小企業の組み合わせで作るのはちょっと難しいし、最終的にロットが多いものは大企業が勝つと思うので、そのあたりが日本企業の勝負どころではなかろうか。
それにしても、深センの出発点は、秋葉原の電気街を真似するところから始まったようで、なんだか卓球王国の座を奪い取られてしまった時のような切なさを感じるのは、小生だけだろうか。
小生だけか(苦笑)。
まぁ、ご参考ということで。