人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

人生を考えさせられる

Kindle Unlimited渉猟。

 

ノンフィクションが好きだから。

それも世の中的にはあまり知られていない世界を描いたものが好きだから。

 

そんなわけで手に取ったのだが、部落解放という「そういう」雑誌に連載されていたものをまとめた作品なので結構長い。

しかし著者に思想的な要素は全くなく、純粋に家畜の解体の技術・仕事が面白くてスケッチやライティングを続けている感じ。

 

なんで差別されてきたのか、世界の国でもそれは同じなのかという問いは通底しているけれど、出発点は「面白いからもっと詳しく」である。

時に軽薄な語り口はちょっと気になるけれど、それでも描き出される世界のリアルは非常に面白い。

 

きっと文章を読むだけで気分が悪くなる人もいると思うけど、そういう人も肉は食べるはずだし、その矛盾は程度問題でしかなく小生も抱えているはず。

しかし、一定の存在感があるケモノを殺し、解体して食べるという行為のリアリティ。

 

パッと「リアリティ」と書いてしまったが、なんのリアリティなのか。

人間が生きるとはこういうことだというリアリティなのか。

 

合気道の練習には「短刀取り」といって、短刀で攻撃してくる相手を捌くものがある。

練習のリアリティを高めるために、「これが本物の刃物だったら」と考えたり、実際に刃が肉に食い込む様を想像したりもするし、家の包丁をコッソリ振り回してみたりすることもある。

 

でも今の日本人の感覚からすると、家で包丁を振り回すのは頭がどうかしていると思うだろう(その異常性が刺激として意味があるわけで)。

しかし家畜とともに暮らし、いざ食べるとなれば本当にその体に刃を突き立て、殺め、切り裂く。

 

そのリアリティを考えると、自分が今まで重ねてきた稽古が、本当にただのお遊びに思えてきた。

また改めて謙虚に稽古に向き合いたいと思ったし、自分の命の糧となってくれている動物たちにも感謝だし、だからこそ無駄にしてはいけないし、また食肉にする作業に従事する人たちにも感謝である。

 

奥が深い。

まぁ、ご参考ということで。