著者の作品に感銘を受けたので近著を読む。
著者は元税務調査官で、「お金の流れで読む世界史」などのシリーズを既に書いている。
タイトル通り、金の流れを追った歴史物で、今まで習った歴史とは違う筋書きを説得力を持って展開しており、ワクワクしながら読みきった記憶がある。
本書は脱税に関する歴史的なトリビア集といったところ。
これまでの本がある種の世界観を持ち得ていたのに対し、若干雑学的な印象は禁じ得ない。
とはいうものの、知らないエピソードの連続で、「へー」だらけではあった。
税金の歴史が始まった瞬間に脱税の歴史もきっと始まったのだろうから、ネタには事欠かないわけだ。
古代ギリシャからヒトラー、ビートルズ、近年のタックスヘイブンに至るまで、人間はいろんなことをやるもの。
因果、業である。
トリビア集と言ってしまったものの、しかし著者なりの世界観が終章にかけて提示される。
それは格差の問題。
消費税などの間接税は、所得にかかわらず課税されるものなのだが、これは貧乏人に負荷が大きい。
そうなると貧しいものはより貧しく、富めるものはより豊かにと、格差を拡大させやすい。
間接税を中心に税収を増やそうとした国は、格差の拡大とともに社会不安が増大し、滅びてきた歴史があると著者はいう。
今の世の中はどうですか、という話に、はっと考えさせられるのだ。
まぁ、ご参考ということで。