前から読もうと思っていたこんな本を読む。
子供の頃にO・ヘンリ短編集を読み、悪い頭なりに「いい話だなぁ」と記憶していて、なんとなくアメリカ文学の有名所を読んでみたいと考えていた。
「アメリカ文学」となると名前が出る著者による、少しライトな作風の作品ということでとっつきやすそうな感じがし、なおかつAmazonのレビューも星4つ半とハズレ無しの予兆。
肺がんを患い仕事を早期リタイアし、離婚もしてしまった60歳手前の男性が主人公。
ふるさとのブルックリンに戻り、新しい生活を始める中で、新たな出会いや旧知の人間とも再会し、様々な出来事が繰り広げられるという、これだけ書くと「ちょっといい話」みたいに見える。
実際はもっと人間ありのままというか、猥雑で下品で粗野で、でも少しいいところがあり、というようなテイスト。
一応の事件があり、波乱があり、解決に向かうというストーリーがあり、飽きさせないものの、読んでいる最中はこの迷路みたいな話はどこへ向かうんだろうと感じていた。
一番個人的に落ち着かなかったのは、ストーリーが著者による完全な創作であろうということ。
もちろん小説なのだから当たり前なのだが、サスペンスとかこれまで読んできた小説は、かなり緻密な取材を通して物語が浮かび上がってきたり、著者の個人的な体験が元になっていたりしたので、一定の安心感があるリアリティというか、ありそうなストーリーという感じがあったのだ。
本書はそれを、著者の完全な創作の力で描ききっていて、そこがちょっと個人的に慣れない感じがした。
が、それは作品の評価に影響を与えるものではない。
そこはかとなく描かれる、人間のだらしなさ、くだらなさ。
そのあたりが、とても好感が持てる一冊であった。
まぁ、ご参考ということで。