禅宗続きでこちらを読む。
補足が必要かと思う。
禅寺で修行僧たちの料理を作る役回りを「典座」と呼び、曹洞宗の開祖である道元禅師は、その「典座」の心得を「典座教訓」という本にして残しているのである。
入門書をこれ以上読んでも仕方がないし、本丸の経典である正法眼蔵に突っ込むのはもう少し後にしようと思ったので、個人的な興味もあって典座の本に手を出した次第。
禅宗の僧侶による「典座教訓」の解説書なのだが、著者の僧侶の随想部分になんとも言えない味がある。
申し訳ないが俗っぽさが残っており、微笑ましくも親しみやすい。
それでまぁ、読んだ感想としては、こういう仕事に向き合う姿勢って日本人全体に共通するよね、という感じ。
どうやら知らず知らずに道元禅師の教えは我々のメンタリティに根ざしているようである。
食材は自分の瞳を扱うかのように丁寧に。
何事も心を込めて。
食材の良し悪し、道具の良し悪し、環境の良し悪しに文句を言ってはいけない。
「働かざる者食うべからず」。
サラリーマンや専業主婦の、少なくとも我々の代の日本人はこういう教育を受けているんじゃないかと感じた。
道元禅師、恐るべし。
余談であるが、本書は読み物としてもそれなりに面白い。
紹介される料理も、質素であるが普通に美味そうだ。
やっぱり動物は食べないのねとか、調味料なら酒や味醂はいいのね、なんて「へー」もある。
可笑しいのは、「うどん法要」というのがあって、その時は好きなだけうどんが食べられるルールなのだが、どこの寺でも猛烈に食べるのだそう。
食事が楽しみなのはわかるが、それとて悟りからは遠いなぁと思いつつ、うどんにがっつく修行僧の姿たるや。
道元禅師が見たら、溜息を漏らされるのか、また違った反応なのか。
いや、修行は大変なんだろうから、とやかく言ってはいけないんだけどね(笑)。
あまりにも面白かったもので。
まぁ、ご参考ということで。