人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

サッカー選手のキャリア、サラリーマンのキャリア

Kindle日替りセールのおすすめに従い、こんな本を読む。

 

香川選手についてはそれほど詳しくはないのだが、スポーツノンフィクション全般が好きなのと、レビューが高評価だったので読んだのである。

タイトルがいかにも幻冬舎っぽいなぁ、というのが読む前の感想(ちょっと笑っちゃう)。

 

本の構成は、香川選手と関わりの深いスポーツライターが、その生い立ちから現在に至るまでを丁寧に記述し、合間合間に本人のコメントが入る、というもの。

類書に比べると結構なボリュームだと思う。

 

それはまぁ、意図したものであるらしくて、全てをありのままに語ることで、その苦労も含め多くの人が参考にできるものになれば、という選手本人の思いによる。

実際、その浮き沈みというか、怪我も含めた悪戦苦闘というか、「日本代表の10番」って、こんなに七転八倒してるものなんだ、というのが率直な感想。

 

「いや、そこはもうちょっと上手くやろうよ」というツッコミを入れたくなる場面も出てくるが、それは小生が経験豊富(笑)なオジサンだからなのか、ストライカーのメンタリティとはそういうものなのか、不思議な感じである。

それにしても、いちサラリーマンとして、彼のようにヨーロッパで戦うサッカー選手のキャリアというのは身につまされるものがある。

 

もっと成長したい、もっと活躍の場が欲しいと心から願い、それが実現できる環境を求める。

相手が本当に自分を求めてくれているのか、そこで本当に活躍できるのか、真剣に悩み、決断する。

 

いざ移籍してみると、上手くいったりいかなかったり、様々な苦労をしながら新たなパフォーマンスを出す。

で、口説いてくれた監督は所々の事情で去ってしまい、監督の戦略・戦術に紐付いていた自分のポジションも危うくなる。

 

そこで次の監督の体制に上手くはまり込むか、新天地を求めるか、ほとんど運任せの展開。

転職エージェント時代に、よくこういう人とお会いしたなと。

 

成長を求め、転職をしたら口説いてくれた上司が先にやめちゃうとかね、外資ベンチャーでよくあります。

この先何年やっていけるんだろう、という不安を抱えながら、とにかく今に集中するしかない、なんていうのも一緒かな。

 

強いチームを応援する、地元だから応援する、有名だから、かっこいいからファンになる、そんなメンタリティとは違う、自分のキャリア・人生を重ね合わせて、彼のような選手を、深い共感を持って応援している人は、きっと沢山居るんだろうな。

そんな風に感じた次第。

 

本書の最後で、非常に高いモチベーションで移籍について語ったギリシアのチームでは、実際活躍の機会が与えられていないようで残念でしかないが、周囲のノイズにかき乱されずに、本人の夢を追い求めてほしいものである。

まぁ、ご参考ということで。