人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

とにかくインプット

人間の本質を知り思索のきっかけとなる読書、ということでSFの名作にちょっかいを出していたが、そのテーマで読書好きから必ず挙がるのが歴史物である。

ということで積読を引っ張り出す。

 

新装版 おろしや国酔夢譚 (文春文庫)

新装版 おろしや国酔夢譚 (文春文庫)

  • 作者:井上 靖
  • 発売日: 2014/10/10
  • メディア: 文庫
 

井上靖はいつぶりだろう、格闘技マニアの間では高専柔道経験者として有名なわけだが(?)、高校の教科書以来かもしれない。 

 

江戸時代に乗船していた船が漂流し、当時の帝政ロシアに滞在・帰国した大黒屋光太夫の物語。

とても長い本なのだが、本当に驚かされるのは著者の取材量であった。

 

丹念に資料を読み漁り、現地にも赴き、インプットにインプットを重ねて物語を編んでいる。

大黒屋光太夫はかなり記録を残しているとはいえ、物語の瞬間瞬間の心情まで記録しているわけではないから、そういった心情は創作だし、当時の江戸幕府の描写は現代日本批判のようでもあり、そこも創作なんだと思うのだが、実際にそうだったとしか思えないほどの説得力を持っている。

 

読み込んで読み込んで、考えて考えて、著者にとっては「こうだったに違いない」と考えられた「真実」、そんな感じがする。

浅いインプットで仮説をいくつも立てて、前に進めながら絞り込んでいく、そんなやり方もあるけれど、圧倒的なインプットで考え抜く凄み。

 

見習いたいものである。

まぁ、ご参考ということで。