古代ギリシアで「健全な精神は健全な肉体に宿る」と言われ、オリンピックの伝統が始まったとされているが、実は「健全な肉体に宿るといいなぁ」くらいのニュアンスが正確な表現だというのを知ってガッカリする、という太宰治の散文を読んだ記憶がある。
精神的に不安定な人だったようだから、体を鍛えればあるいは、という思いがあったのかもしれない。
しかし、太宰治の願いは通じたようである。
こんな本を読む。
タイトル通りのクリニックを運営する精神科のドクターによる一冊。
ライターがついていて、治療の概略をストーリー仕立てでわかりやすく説明している。
身近に多い病気でもあり、興味深く読ませてもらった。
精神的な不調を感じて精神科や心療内科を訪れると、「うつ」と診断されて薬を処方されることが多いが、著者の見立てによると薬の効果がある「うつ」である患者は少数しか居ない、という衝撃的なイントロから始まる。
既往症や生活習慣、感情のパターンをしっかり理解し、その上でまず生活習慣から変えていき、認知行動療法に入っていくそうだ。
それはなんだか正しいと思う。
武道やトレーニングを通じて、身体と向き合い続けているけれど、西洋医学は基本的に対症療法方なので、不調の現象に対処しようとするが、その原因そのものを取り除かないことが多い。
精神的な不調にもその原因があって、不規則な生活習慣感や肉体的な劣化があり、ストレス要因への向き合い方に問題があり、ということを、上記のアプローチで解決していくようである。
後書きで著者も再三強調しているが、なかなか厳しそうではある。
通読してパッと思ったのは、禅寺に修行に入る感じだなと。
早寝早起き簡素な食事、活動的な生活と座禅(メディテーション)、読経(認知行動療法)、みたいな。
精神的な不調に悩む多くの人に、一度読んでもらいたいものではある。
まぁ、ご参考ということで。