無借金経営を誇りに思っていらっしゃる経営者には何度かお会いしたことがある。
会社を潰さないという意味ではもちろん立派だ。
しかし新卒で銀行に入社したからというわけではないが、企業経営で無借金が完全なる善かというと、ちょっと違うと思う。
事業の内容にもよるのではあるが、企業を成長させるためには、大きくお金を突っ込まねばならない。
例えば、本当に売れる商材が確保できたとして、手許資金の1億円ではなく銀行からも借り入れを起こし、5倍10倍の資金で勝負をかける、というのが商売(レバレッジを掛けるとも言う)。
銀行から借金をしなければ潰れるリスクは無くなるが、商売としても5分の1、10分の1で留まってしまうということだ。
ちょっと批判的な言い方になるが、「無借金です」ということは、レバレッジを掛けて勝負をしてこなかった、するチャンスがなかった、ということでもある。
もちろんビジネスにはリスクがつきものなので、上手くいくことばかりではない。
その不確実な前提で、期待値以上のリターンが見込めるチャンスを探し、果敢にお金を突っ込むというのは、とても難しいこと。
なので、ある程度ビジネスが確立している会社であれば、ひたすら溜め込んで無借金や現預金残高を誇る方が簡単。
そうやって溜め込んでいる会社は日本にたくさんあるのだけれど、裏を返すと「お金を使いあぐねている」とも言える。
お世話になったベンチャーの創業社長が、「管理と経営は違う」とおっしゃっていたけれども、お金の「入」と「出」を「管理」して預金残高を増やすだけではなく、「そのお金でどうするんでしたっけ?」を考え、果敢に突っ込んでいくことこそ「経営」なんだと思っている。
まぁ、ご参考ということで。