人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「死刑 その哲学的考察」 読了 〜取り返しがつかないから踏み止まる〜

リンクはこちら。

 

死刑 その哲学的考察 (ちくま新書)

死刑 その哲学的考察 (ちくま新書)

 

 

 

著作権法の本を読んだので、法学つながりというわけではないのだが、一応大学の専攻は刑法総論だったのでね…。

Kindle日替りセールをポチるといういつものパターン。

 

このタイミングで選択したことにあまり意味はないのだが、ちょっと抽象度の高い本が読みたかった気分。

久しぶりのこういう読書は楽しかったけれども。

 

本書はタイトル通りの内容ではあるのだが、著者の立場は明快で、死刑反対である。

それを声高に押し付けるわけではなく、なぜ問題なのか、道徳とは何か、といった議論を踏まえ、政治哲学や冤罪の問題に進み、結論を示すという構成になっている。

 

なので、延々と道徳をめぐる論考が続くわけでもなく、新書を読むような読者を飽きさせない展開になっており、気持ち良く読むことができた。

言語で善悪を記述することはできない、といったあたりは、かなり抽象度は高かったし、他の論者の見解も聞いてみたいと思ったが。

 

著者の主張はこうだ。

まず、死刑には必ずしも期待される効果が論証されているわけではない。

 

そして社会構造上、冤罪というものは必ず起こりうるし、それによって死刑に処されてしまえば、取り返しがつかないので、やめるべき、というもの。

聞いたことがあるような主張であるものの、小生は非常に説得力があると感じたが、いかがだろうか。

 

誰しも間違いは起こす。

それを前提とした時に、致命的な間違いにならないようにするのは、仕事の場面では極めてベーシックな考え方だと思う(仕事に限らないとは思うが)。

 

それを社会構造でも持っておくことは、なんらおかしなことではない。

さらに言えば、誰もが冤罪の被害者になりかねないのだし。

 

興味のある方は是非。

まぁ、ご参考ということで。