人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「はじめての哲学的思考」 読了 〜思考のための方法論〜

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はじめての哲学的思考 (ちくまプリマー新書)

はじめての哲学的思考 (ちくまプリマー新書)

 

 

 

Amazon本が続いたので、気分転換に在庫に手をつける。

こういう時は一般教養がよい。

 

小生の合気道の師匠は、合気道だけでなく学問全般に造詣の深い方だったけれども、それはさまざまな学問体系、そして武道の体系も含まれる諸々の個別学問の上位概念を為す一般法則として哲学を捉え、その哲学と、合気道を含む個別学問を行き来しながら、ご自身の陶冶を続けられていたからなのであった。

そういう意味では、大学の哲学科で習うような「哲学史」「哲学者研究」、そして一般的なイメージである「哲学的な」抽象度の高い思考の類は、別に哲学ではない、というスタンスのお方であった。

 

まぁそれはともかく、本書については「哲学的な」抽象度の高い思考方法を、一般の読者向けに解説していく本ではある。

「事実から当為を導いてはいけない」=「事実と解釈は厳密に分けられなければならない」とか、「偽問題に振り回されてはならない」=「難度の高い問いに見えるが、あれかこれかに寄せてしまうことで現実には存在しない問題に惑わされない」とか、なるほどと考えさせられる知恵がある。

 

「偽問題」については、そのような記載はなかったが、トロッコ問題なんかがそうなのかなと思う。

現実に目の前の大男突き落とさなくても、トロッコを止める選択肢は幾らでもありそうなものだが、大男を突き落とすか、線路の上の人間を見殺しにするかの二択を迫るのがトロッコ問題だろう。

 

それを考えることに意味が無いとは言わないが、「偽問題」というのは大抵結論がなく、「いやぁ、世の中には難しい問題がありますなぁ」というコメントで終わるのが関の山だと、著者はコメントしている。

ともあれ、上記のような方法論を携え、何人かでフラットに哲学的対話を進めることを推奨し、本書は締め括られている。

 

安直な結論に走らないこと、答えの無い問題に思い煩わされないこと、さまざまな人と対話を通じて高次の見識に至ること。

いずれも今の時代に必要なことではないかと、ふと反省させられた次第である。

 

まぁ、ご参考ということで。