人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「会社にお金を残す経営の話」 読了 〜味わい深い実践の話〜

まずはリンク。

 

会社にお金を残す経営の話

会社にお金を残す経営の話

 

 

 

著者のことはよく存じ上げないが、経営コンサルタントとして、多くの再生事例に携わり、その経験から経営の要諦を語るということで、「大番頭」を目指して新卒で銀行を選んだ小生としては、この手の本を素通りできないのである。

Kindle日替りセールで紹介され、そのままポチった一冊。

 

本書の趣旨は前述の通りだが、内容は著者が実際に携わった会社の事例をもとにした、物語形式で進み、類書にあまり馴染みのない人にも読みやすいと思う。

想いは充分伝わるのに、テーマを詰め込みすぎていないので、比較的短いのも読みやすさの一因か。

 

ターゲットは中小企業で、基本的には限界利益を管理すること、キャッシュを大事にしていくというポリシーで、うまく言えないのだが「真っ当な中小企業経営」という印象である。

なるほど面白いな、と思ったところをいくつか。

 

限界利益管理のところで、「その変動費は、本当に売上と連動して上がり下がりしますか?」ということを著者は問う。

売上品目ごとに、単価×個数×頻度までブレイクダウンすることを推奨しているのだが、変動費のうち原材料は個数にリンクし、物流費は頻度に連動しているので、個数が減っているのに頻度が増えていれば、売り上げは変わらないのに原材料費は減り物流費は増えるので、限界利益は変わってしまう(仮に変わらなくても内訳は変わる)ので、その点に気をつけるべし、という。

 

それから、保険加入などの各種節税を推奨していないこと。

税効果があったとしても、資金の社外流出の方が問題であり、経営の安定性を損ねるというスタンス。

 

税金は経営継続に必要なコストであり、ビジネスをやりやすくするための国づくりへの投資でもあるのだから、という整理をしている。

他にも、社長就任時から後継体制整備に着手するとか、最後にものを言うのは理念であるとか、組織としての一体感を作るために「コストセンター」的な概念を持ち込んではいけない、等々。

 

確かに場数を踏んで来た人らしい含蓄が感じられる一冊であった。

ある程度数字に強い人が読む想定だが、中小企業の経営者、番頭さんには、広く読まれて良い本ではないかと感じた。

 

まぁ、ご参考ということで。