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「資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界」 読了 ~その思想が当たり前になることが偉人の証~

まずはリンク。

資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界

資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界

 

 

先日の「小林カツ代伝」に続き、評伝を読みたくなって在庫からチョイス。

あの達磨大師のような風貌と、かつて世界的に評価された経済学者である、という程度の知識しかなく、興味を持っていたので手に取る。

 

始めに断っておくと、非常に長い本である。

ハードカバー二冊分、新書だったら三冊というところだろうか。

 

サブタイトルの「と経済学の世界」が認識から抜け落ちていたようなのだが、この後段の部分が全体の4割くらいを占めると思ってもらって良い。

宇沢氏の来歴があり、そこで出会った(主に)経済学者たちが登場すると、その経済学者の来歴や理論のサマリー、思想的背景まで記述が及ぶので、膨大な量になる。

 

本書に何を求めるのかによって、本書の評価は人によると思うのだが、小生は宇沢氏の来歴に興味があったので、寄り道ばかりで非常に長い本だと感じた。

それはともかく。

 

宇沢氏は経済学者としての前半生をアメリカ学会のど真ん中で過ごして、ノーベル経済学賞候補にまでなっている。

その後の紆余曲折は本書に詳しいが、自身の問題意識から、環境・公害問題といった、「社会資本」の概念を確立することに心血を注ぐ。

 

今でこそ、環境問題が世界の話題のメインストリームにのることは日常茶飯事となったが、ひとえにそれは宇沢氏をはじめとする先人たちの努力があったればこそ、ということを思い知らされる。

もはや「当たり前」となった概念も、誰かの努力によって「当たり前」となったのであり、それこそが偉業というもの。

 

小林カツ代伝」も、「小林カツ代前、以後」という表現があったけれど、宇沢氏もまた、「宇沢氏前、以降」といっていい存在だったのではあるまいか。

敬服の至りである。

 

まぁ、ご参考ということで。