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この時期だから、というのもあろう、Kindleデイリーセールでレコメンドされて、評価も高かったので購入。
この時期に、過去の痛ましい事例を振り返っておくことは、一人の人間として意味があると思い拝読。
ただ本書は、事故の原因分析と再発防止策を述べる類のものではなく、一度に520名が亡くなるという凄惨な現場において、県警の現場責任者として検屍と遺体引き渡しの指揮をとった著者によるドキュメントである。
日本の公務員の奉仕の精神、駆けつけた医療関係者や関係者の尽力には、ただひたすら頭が下がるばかり、そういう本だ。
極限状態をいかに乗り切ったかというドラマもあるのだが、その本筋と外れたところに興味深い点がいくつか。
なんとも複雑に感じてしまったポイントなのだが。
まず、日本人の遺体に対する格別の思いというか、宗教観。
外国籍の犠牲者遺族との対比でも描かれているが、五体満足でご遺体を引き渡すことに関係者が命を賭け、遺族もその心遣いに涙を流して喜ぶ。
それから現場作業に対する品質要求。
作業担当の警察官が、過って遺品を紛失してしまう事故が起きるのだが、その捜索を、全体作業に支障をきたすほど取り組み、結局著者が遺族に辞職を匂わすまでの謝罪をするが、遺族は大激怒というエピソード。
翌日遺族側が謝罪し、著者とはその後も親交が続くという美談で終わるのだが、今の時代も通用するのかなぁ、という違和感は残った。
あれから34年も経過してしまったのだが、日本人の宗教観をはじめとする、こういった感覚は変化したのだろうか。
変化していないということはあるまい。
こんな事件は二度とあってはならないのだが、同じようなことがあったとして、我々は同じようなリアクションを取るのだろうか?
それは進歩なのか、退歩なのか。
何を変え、何を不変とするのか、思わず考えさせられてしまうのである。
尚、本書の内容から、必然的に凄惨な描写が多々続くので、そういったものが苦手な方にはあまりお勧めしない。
まぁ、ご参考ということで。