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「世界史をつくった海賊」 読了 〜女王陛下の海賊たち〜

まずはリンク。

世界史をつくった海賊 (ちくま新書)

世界史をつくった海賊 (ちくま新書)

 

 

世界史系の書物は国際関係と未来予想の観点から、比較的読むようにしているのだが、本書はKindleのセールでレビューも高かったのでポチった次第。

ちなみに小生は海賊にはそれほど興味はなく、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」はパラパラ観たが、某有名海賊漫画も一話とて読んだことはない。

 

本書は、国際関係論、オーストラリア史等を専門とする著者が、現代の海賊問題や、現代の国際関係のベースとなったイギリス中世史を紐解く中で、結果的に当時の海賊にスポットが当たっていったというような経緯で書かれたようだ。

新書なので一般読者向けに分かりやすく書かれているが、少々ボリュームはある本で、当時の海賊の成り立ち、実態や、背景にあったイギリス、スペイン、ポルトガル、アジアとの国際関係にまで言及が及ぶ。

 

結論から述べれば、非常に面白い本だったが、巻末に提示される膨大な参照文献に行き当たるまで、「ほんとかなぁ、これ」と思いながら読み進めていた。

何が、というと、小生の認識していた海賊と、本書で語られるその姿が、あまりに違っていたからだ。

 

海賊といえば、時の国家権力に背を向けながら、自由に生きるで豪快な男たち、というイメージだが、全く違うのである。

イギリス王室と結託し、というより王室の意向を受けて、スペインなどの周辺国家の財を強奪し、戦時にあっては非正規軍として国家の勝利に貢献するという、国際法が存在すれば完全にイリーガルな国家権力(暴力装置)なのだ。

 

周辺国からの非難を受ければ、エリザベス女王は王室の関与を否定し、「冒険商人」という呼び名を与えて禁じられた奴隷貿易やアヘン交易を実行させる。

欺瞞にも程があるし、ヨーロッパ人はホント怖いなと思ってしまう。

 

東インド会社も結局は海賊とイギリス王室の集金マシーン、なんていうことの記載もあるので、世界史で習ったことを気持ちよくひっくり返してくれる。

とはいえ、参照文献は膨大ではあるものの、エリザベス女王の関与は非公式なので、残っている資料も少なく、推測で組み立てられている部分もあるのだろうけれど。

 

ビジネスってなんだ、強欲さは必要なのか、やっぱり謀略は必須なのか、いやいやそういう黒歴史を反省してこれからを考えることが歴史を学ぶ意義だよね、とか色々考えてしまう。

まぁ、ご参考ということで。